A 貴社はあくまで管理会社であって、紛争の当事者ではないことに留意すべきです。
一般的に、苦情が入った段階では、貴社にとって、当該騒音の存否や程度、いわゆる社会生活上の受忍限度を超える程度の騒音か否かについて、確認が取れていないものと思われます。苦情を申し出ている方が過敏であったり過度に神経質になっているだけであって、騒音を出していると疑われている方には問題がない場合もあります。そのような不確定な情報を鵜吞みにして、騒音を出している疑いがある方に、一方的に直接警告等をするとトラブルに発展する可能性があるため慎重になる必要があります。
また、良かれと思って紛争を解決しようと間に入った結果、話をこじらせてしまい、管理会社の対応が自体を悪化させた等と主張され、怒りの矛先が管理会社に向かってしまうことも多々あります。
そもそも生活音や騒音トラブルは、住民同士の紛争であり、住民同士で解決すべき相隣関係です。他人の紛争について間に入って交渉等を行うことは非弁行為として弁護士法72条に違反する可能性もあります。逆にいえば、弁護士法72条違反になる可能性があるためこれ以上介入することはできない(すべきでないと顧問弁護士が言っている)等と説明して、紛争から手を引くことが考えられます。
【管理会社としての対応方法の例】
① 貼り紙・ビラの配布
騒音の通報があった初期段階においては、物件のエントランスやエレベーター等の住人が見やすい位置に注意喚起の貼り紙を行うことや、注意喚起のビラの全戸配布を行うことが考えられます。この際には、騒音を出している疑いのある方を特定せずに一般的な注意事項として配布を行うことが肝要です。なぜなら、この段階において、特定の個人を騒音を出している方として周知してしまうと、名誉棄損等で訴えられる危険性があるためです。初回のビラを全戸配布としているのはこのためです。団地の場合は当該棟のみでよいと思われます。
二回目以降は、騒音の苦情を申し立てている方の上下左右(あるいは八方)の住戸に入れる等の絞り方も考えられます。これは騒音を発生している方を特定した考え方ではなく騒音の苦情を申し出ている方を基準にした考え方です。実際、建物の構造によっては音が反響して実際の音の発生源とは違う方向から音が聞こえていると感じる場合があります。
二回目以降の注意喚起のビラの配布においては、過度な頻度にならないよう、3週間程度は空けて配布を行うことが考えられます。
基本的には、以上の対応に留めて、それ以降は、入居者に弁護士へ相談するように促すことが無難と思われます。
② 個別の警告
個別の接触はあまりおすすめしておりませんが、管理委託契約において苦情の伝達方法について個別の連絡を規定している場合もままありますので、どうしても特定の住民へ警告をしなければならない場合には、可能な限り事務的かつ簡潔に伝えることが肝要です。
特定の住民に警告を行う場合には、書面の投函等、一方的な通告にて完結する方法がよいと思われます。個別訪問や電話、メール等であれば反論等を行うことが容易であり、反論の他にも、苦情を申し立てた方の個人情報を要求されたり、他の苦情を主張されたり等、収集がつかなくなる可能性があるためです。書面の投函や連絡先への架電が比較的多く取られている手段と思われますが、相当な期間をおいて2・3度行っても騒音がやまないようであれば、管理業者の対応としては限界ということで弁護士等へ相談するように促し手を引くことが適切と思われます。
また、騒音の通報があった場合にはオーナーへの情報共有も適宜行うことが好ましいと考えられます。騒音問題や紛争が物件価値に影響を与える可能性も否定できず、賃貸借契約の解約や更新拒絶等の検討の契機になると考えられるためです。なお、騒音等があまりにも酷い場合においてマンションであれば管理組合としての対応の必要があるため適宜、理事会への管理報告書等の提出の折等に苦情があり対応を行った旨等の情報共有を行うことが考えられます。
可能であればあらかじめ決められた騒音対応のマニュアルや規則を作成しておくことがよいと考えられます。なぜなら、個別のトラブルにおいて、当事者から様々な無理難題を要求がなされる可能性があり、これを断る理由としてあらかじめ決められたマニュアルや規則があり、そこまでしか対応をしかねる旨の説明が一律にできるためです。マンションであればマニュアルや規則についてあらかじめ理事会への報告や承認を得ておくことが考えられます。
近隣トラブルは住民の性格やキャラクターの問題もありますので、上記の例もあくまで例に過ぎず、個別具体的には顧問弁護士等に相談しつつ進めることが肝要と思われます。
