A 社会通念上の受忍限度を超える場合には、違法と判断される可能性があるので、程度によっては遮光工事を行うことが考えられます。
大阪地方裁判所昭和61年3月20日判決は、ビルの反射光被害を理由として加害者に対し被害防止工事の実施と損害賠償の支払いを命じました。
事実関係は概要次のとおりです。
原告は、木造2階建居宅を賃借して呉服店を経営していました。
被告は、原告店舗から3.4メートルの道路を隔てたところに、鉄骨4階建のビルを建築しました。
被告ビルの壁面タイル及び窓ガラスの反射光が原告の店舗に差し込み、呉服店陳列商品の色や柄が正確に見えず、色やけ被害が生じる状態となりました。
また、大阪市建築局監察課は、反射光を防止するよう指導しましたが被告は従いませんでした。違反建物是正措置命令に対しても従いませんでした。
そこで、原告は、店舗の所有権を代位行使して、遮光工事及び400万円の営業損害と慰謝料を求めました。
裁判所は次のように判示して、遮光工事と90万円の損害賠償請求を認めました。
「右認定事実に照らして検討するに、
(一)被告建物の南側外壁の赤味を帯びた反射光が原告店舗に影響を及ぼしており、
(二)原告店舗の正面テントも、反射光防止のために生地を厚手のものに取替えたうえ、晴天の日には朝の開店時から夕方まで使用せざるを得ない状態であり、外から店内が見えなくなつて顧客穫得上も不利な状況でありテント使用時においても、店内が赤味を帯びる時があり商品選択や色合わせに支障が生じ、予定の売上が取消になつたりするなど、原告店舗営業上相当深刻な被害というべきである。
(三)原告店舗の方で右反射光を防止する方法としては、店舗北側を反射光が入らないような構造にすることが考えられるが、そうすると、テント使用時と同様に外から店内が見えなくなり、店舗営業上不利であり、しかも北側からの反射光が入らないと同時に自然光も遮られてしまうようになつて、原告店舗利用上の機能を相当減ずることになる。
他方、(四)被告建物は、容積率、建ペい率、道路斜線制限について建築基準法の規定に違反しており、右規定に適合するような建て方であれば、反射光による原告店舗の被害も多少緩和されると考えられるところ、被告は大阪市の是正措置の命令にも一切応じない。
(五)被告建物南側外壁に反射光防止策を施すとすると、防止効果、工事費用等の点で本件工事が最も優れた方法といえる。本件工事は被告建物の構造に損傷を加えたり、新たな工作物を構築したりするものではなく、建物利用上の機能を損うものではない。
(六)なお、本件工事により外壁の色が多少変化することについて考えるに、一般に建物の外壁の色をどうするかは建物所有権行使の一態様であり、建物の一つの機能としての意味を持つことは否定できないところであるが、他人の法益を侵害するような態様での権利行使が制限されることは自明の理である。また、被告建物は店舗兼居宅として普通に見られる形態であつて、これが設計者の芸術的意図を表現し世間にアピールするため、あるいは営業政策上の宣伝効果を狙つて人目を引くためのように、建物の外観や色彩に特に比重を置いたものではない。しかも、本件工事は特定の色の使用を被告に強制するものではなく、ただ反射光を防ぐように吹付塗装を行うということであつて、同じ効果が得られるならば被告の好みの色を使用して目的を達するこども当然許されるのであり、また工事対象外の外壁についても、被告の意思で工事対象面と同種の外観にすることも可能である。要するに、本件工事によつて被告建物の経済的又は機能的損失が生じるとしても、それは前記(三)で検討した原告店舗の場合と比較して、はるかに少ないものと考えられる。
以上の通り、被告建物の反射光による原告店舗の被害の種類及び内容、右被害防止に関する被告と原告及び大阪市との交渉経緯、本件工事を行つた場合の効果及び被告建物に与える影響等を総合すると、被告建物の反射光により原告店舗で原告が蒙る被害の程度は、いわゆる受忍限度を著しく超えているものといわざるを得ず、原告は原告店舗所有者に代位して被告建物所有者の被告に対し、侵害行為の排除及び予防のため本件工事を行うよう請求することができるものというべきである。
三 損害賠償請求について
・・・2 そこで、原告の損害について検討するに、前記二認定の通り、原告の売上が被告建物完成前に比ベて年間一〇〇〇万円以上減少しているが、右減少が反射光被害と関連していることは認められても、減少額のすべてについて被告の不法行為と相当因果関係があるものとは本件証拠上直ちに断定できない。そして具体的には、反射光のために客が予定した商品購入を取消すことが時々あつたこと、晴天の日には夕方まで原告店舗をテントで覆わなければいけない状態になつたこと、反射光被害解決のために原告は被告側との交渉や大阪市への相談等に労力を費したこと、その他本件証拠上認められる諸般の事情を勘案して、被告の不法行為により原告の蒙つた財産的及び精神的損害は金九〇万円と認定するのが相当である。」

