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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
 不動産業者様が日常的に疑問を持たれる法律問題についてすぐにご回答できるように日々研鑽を重ねています。顧問業務に限らず個別の案件のご依頼についても多数の経験を有しています。
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Q 【立退き訴訟・事業用】更新拒絶・解約申入の正当事由はどのような場合に認められますか。立退料の相場はどれくらいですか。

東京地方裁判所平成28年1月12日判決
事業用建物の賃貸借契約において、立退料の支払と引換えに明渡請求が認められた事例

(事案の概要)
月額賃料:月額33万3333円
築年数:昭和40年1月建築(解約申入時で築約48年)
構造等:鉄骨鉄筋コンクリート造地上5階地下2階建 用途・目的:店舗(DJレストランバーとして使用)
面積:105.25㎡(地下2階部分の一部)
地域:東京都新宿区歌舞伎町
終了事由:解約申入れ(※法定更新後の解約申入れとして認定。主位的な債務不履行解除の主張は背信性がないとして否定)
賃貸人側の必要性:築50年近くが経過し、耐震診断で倒壊の危険性があると判定され、エレベーター改修等も含め修繕に約2億4000万円がかかること。周辺の歩道セットバック等を含む再開発計画があり、容積率緩和を利用して8階建てビルに建て替える計画があること。また、消防法違反や共用部分の用法違反があり信頼関係が破壊されていること。
賃借人側の必要性:平成11年(1999年)から店舗を経営し、その収益が被告の収入の約半分を占め、家族の生活や自宅マンションのローン返済等を賄っていること。内装工事に約300万円を投じていること。
立退料:1000万円(※原告提示額は705万円、被告主張額は5000万円以上)
算定方法:不動産鑑定士による鑑定評価額(賃料差額補償方式、収益方式、控除方式等を比較考量して算定された705万円)をベースとしつつ、営業上の損失や移転費用が見込まれることなどの諸般の事情を考慮して増額し、1000万円と算定した。

(判旨抜粋)
(消防法違反等による契約解除・信頼関係破壊の否定)

被告が新宿消防署長の警告を受け、原告が警告書を発出してから上記解除の意思表示がされるまでの10年以上の間、原告が特段問題にした形跡がないこと、・・・・・・消防法違反について、被告が指摘を受けた後、最終的には是正のための措置を行っていること、・・・・・・共用部分への物品の設置が継続的に行われていたとまでは認められないことに照らすと、これらの債務不履行が重大なものとまではいうことができず、原告と被告の間の信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があると認められる。

(建物の老朽化と建替え・再開発計画の合理性について)

構造耐震指標が所定の値を満足しておらず、耐震性に疑問があるため耐震補強等の対策が必要であるとされたほか、・・・・・・壁面設備の越境部分の修繕やエレベーターの改修等を行う必要があり、・・・・・・これらを修繕するために多額の費用を要することからすると、本件ビルにつき修繕を行った上で使用を継続することが現実的であるとは認められない。また、・・・・・・周辺の歩道をセットバックすることによって広い歩行空間を確保することが提案され、・・・・・・本件ビルの敷地部分において上記のセットバックを行った場合、容積率が緩和されることが見込まれ、・・・・・・地上8階、地下2階建ての建物を建築する内容の事業計画が可決されたことも認められ、これらのことからすると、原告が本件建物の明渡しを求めることにつき、一定の必要性があることが認められる。

(賃借人側の建物使用の必要性と立退料による補完について)

他方、被告は、平成11年6月以降、本件建物において本件店舗を営み、その収益が平成25年分の被告の収入金額の約半分を占め、被告及びその家族の生活が本件店舗の経営に大きく依存していることが認められ、被告が本件建物を使用する必要性もまた大きいものであることが認められる。 そうすると、・・・・・・本件賃貸借契約について直ちに解約申入れの正当事由が認められるということはできないものの、原告が被告に対し、相当額の立退料の支払をすることにより、解約申入れの正当事由を補完することができるというべきである。

(立退料の算定:鑑定評価額からの増額認定と過大な請求の排斥)

不動産鑑定士が本件建物の老朽化に伴う立退料について、鑑定評価額を705万円としたこと、被告が本件建物以外の場所において本件店舗と同様の営業をする場合、相当額の営業上の損失及び移転費用を要することが見込まれること等の諸般の事情を考慮すると、解約申入れの正当事由が認められるための立退料としては、1000万円が相当と認められる。これに対し、・・・・・・改装費用として2000万円もの金額を要することが見込まれると認めるに足りる証拠はなく、被告が主張する移転費用等に対する補償としては、・・・・・・賃料差額補償方式による査定において既に本件店舗の移転費用として一定の金額が考慮されている上で、・・・・・・営業上の損失及び移転費用が生じることを考慮して、立退料を1000万円と認めることで十分足りるというべきである。

東京地方裁判所平成27年12月17日判決
 居住用・事務所用建物の賃貸借契約において、立退料を拒絶したため明渡請求が認められなかった事例

(事案の概要)
月額賃料:月額10万円
築年数:不明(※マンションの1室)
構造等:鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造陸屋根11階建
用途・目的:居宅(※実際には設計事務所兼住居として使用)
面積:32.97㎡(3階部分の1室)
地域:東京都中央区銀座
終了事由:解約申入れ(法定更新後。※主位的な賃料不払による解除の主張は背信性がないとして否定)
賃貸人側の必要性:原告の母の父が死亡したことにより、同居していた都営住宅から退去しなければならなくなったため、自己所有である本件建物に居住する必要性が極めて高いこと。
賃借人側の必要性:平成17年(2005年)から10年以上にわたり設計事務所兼住居として使用しており、交通の便やイメージが良い銀座という場所にこだわる合理性があること。
立退料:提示なし(※原告は立退料なくして解約が認められるべきと主張し、支払を拒絶した)
算定方法:不明(※正当事由が否定され請求棄却となったため)

(判旨抜粋)
(賃料不払による解除・信頼関係破壊の否定)

被告会社が賃料の振込を停止したのは、被告Cにおいて、貸主であった亡Dが死亡したことを聞きつけ、賃料の振込口座が凍結されることに配慮したためであり、その後不払の期間が長引いたのは、そもそも原告らから本件建物の相続及び貸主の地位の承継に関する通知書が届いたのが平成26年11月21日であり、しかも、当該通知書に、・・・・・・被告らにとって予期しなかった対応が記載されていたため、賃料の支払にも慎重にならざるを得なかったことが主たる原因と考えられる。そして、本訴訟提起後速やかに未払賃料全額が支払われていることからすると、被告らの賃料の支払能力及び支払意思には何ら問題はないと思われ、亡Dが貸主であった平成17年6月以降の10年間、賃料の滞納があったという事情も窺われない。これらの事情に照らすと、被告会社による賃料不払には、貸主に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるというべきである。

(双方の使用の必要性の比較衡量について)

原告ら及び原告ら母において、他に居住可能な不動産を所有しているわけでもなく、いずれも就労しているものの経済的に余裕のない生活状況であるため、民間の物件の賃料等を負担することが容易ではないことを考慮すると、原告B及び原告ら母が本件建物に居住する必要性は高いというべきである。設計事務所の業務の性質上、イメージが重視されることは理解でき、銀座所在にこだわる被告らの主張もあながち不合理なものではない。もっとも、一般に、設計業務は事務所が所在する地域や地域住民と密着したものではないから、事務所の場所的代替性は高いと考えられる・・・・・・。 そうすると、本件建物の使用の必要性という観点からは、原告らの事情の方がより切迫しているといえるから、その都合を優先的に考慮するのが相当というべきである。

(立退料支払の拒絶と正当事由の否定について)

被告らにおいても、本件建物を使用する必要性が全く認められないわけではなく、事務所の移転に伴い一定の経済的損失が発生することも予想されるところ、そうした負担を全て被告会社において甘受すべきであると言い切れるほど、原告らの必要性との差は歴然としたものではない。そもそも、原告らの必要性が被告会社の必要性に優越するに至った最大の理由は、G(※1)の死亡に伴い、原告B及び原告ら母が本件都営住宅から退去しなければならなくなった点にあるところ、この事情は本訴訟係属中に偶々発生したに過ぎず、それがなければ、原告らが本件建物を使用する必要性は高くはなかった・・・・・・。したがって、・・・・・・本件は、一定の立退料の支払を補完事由として正当事由が具備されるに至る事案であると考えられ、原告らが立退料支払の申出を拒否している状況の下では、その請求(予備的請求)を棄却せざるを得ない

※1祖父

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