A 原則として遺産分割時です(多数の裁判例)。一部、相続開始時をとる裁判例も存在します。
新潟家庭裁判所昭和34年6月3日審判は、遺産分割時とする理由を次のとおり説明しています。
「・・・そこで以上のとおり算出された相続分(残額相続分)の割合をもつて本件遺産を分割すべきものであるところ、ここに問題となるのは遺産物件はいかなる時期の評価額を基準として現実に分割すべきものかということである。
民法第九〇九条には遺産の分割は相続開始時にさかのぼつてその効力を生ずると規定されていること、同法第九〇四条には残額相続分算出の対象となる贈与の価額は相続開始時をもとにして定めると規定されていることからして分割の価額は相続開始時をもつてその基準とすべきものであるとの見解があるが、
(一)分割の対象となるものは原則として現に存在する財産またはその代償物であつて、遺産物件が分割の時までに滅失してその代償物も存在しないときは当然分割の対象から除外され、また相続開始後に自然的事実により増大した物があるときは当然その増大したものの全部が分割の対象となるべきものであること、
(二)分割の対象となつた物件中に債権があるときは各共同相続人は分割時における債務者の資力を担保する責任があり(民法第九一二条)、債権取得者の受ける利益は分割時が基準となるべきものであること。
(三)各共同相続人は、他の共同相続人に対して売主と同じくその相続分に応じて担保の責任があり、(民法第九一一条)、その瑕疵は相続開始前から存在していたものにかぎらないこと、
(四)家庭裁判所が遺産の分割のために必要があると認めて遺産の全部について換価処分をさせた場合(家事審判規則第一〇七条)には、当然換価時をもとにして定められた換価代金が分割されるものであること、
(五)家庭裁判所が遺産分割の方法として共同相続人の一人または数人に債務を負担させて現物をもつてする分割に代えた場合(家事審判規則第一〇九条)には、その債務の発生ないし債権取得者の利益はその効力において相続開始時にさかのぼることはできないものであること、
(六)また、家庭裁判所が遺産の一部についてのみ前記のように換価処分をさせ、または共同相続人のある者に債務を負担させた場合において、残余の財産に対してのみ相続開始時の評価を採用することは、全部についての総合計算をするうえに価値上の錯乱をきたすおそれがあること、その他の理由により、ここに分割すべき遺産の評価は分割時を基準とすべきものと解する。」

