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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
 不動産業者様が日常的に疑問を持たれる法律問題についてすぐにご回答できるように日々研鑽を重ねています。顧問業務に限らず個別の案件のご依頼についても多数の経験を有しています。
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Q 使用貸借であれば立退料を支払わずに明け渡しを受けることができますか。

A 目的や期間を定めていない使用貸借であれば、いつでも解除をすることができるのが原則ですが、例外的に、事情によっては、明渡請求が権利の濫用に該当するとし、補償金の提供を権利の濫用に該当しない事情として考慮している裁判例(東京高等裁判所平成5年12月20日判決、大阪高等裁判所平成2年9月25日判決)があります。

大阪高等裁判所平成2年9月25日判決
 使用貸借契約解約告知による建物明渡請求について、金銭支払いを権利濫用の消極的事由として斟酌した事例

(判旨抜粋)
 本件使用貸借は、明示的には単に借主がその建物に居住することを目的とするといわざるをえないものの、黙示的には控訴人と被控訴人義信との兄弟間の誼を基礎として、被控訴人義信及びその家族が控訴人と協力して母の老後の扶養及び世話をすることが前提となっていたところ、その後、被控訴人義信とその家族は老母の世話に快く協力しなかったばかりでなく、控訴人と被控訴人義信との兄弟としての誼も消失し、母死亡後の法要も共同でなすような雰囲気がなくなったこと、その他控訴人の年齢、健康状態、居住態様等から考えると、後記本件使用貸借解約の意思表示の日には本件使用貸借の前提たる事情はその重要部分において欠缺するに至り、もはや貸主たる控訴人に使用貸借の存続を強いることは酷といわざるをえない。
 それゆえ、控訴人は被控訴人○に対し、民法五九七条二項但書の類推適用により、本件使用貸借を解約することができるものというべきである。
……亡△の死亡後未だ五年に満たないこと、亡△の生前の世話も不満ながらも相当程度は被控訴人らにおいてもこれを行ったこと、被控訴人義信も五六歳でそれほど裕福な生活をしているものでなく、本件建物は同被控訴人の低収入を補うに貢献していたことなど、諸般の事情を考慮して考えると、控訴人による無条件の本件建物明渡請求は信義則に反し、権利濫用となるとの誹りを免れない
 しかし、以上認定の控訴人に有利な事情に併せ、控訴人が右明渡請求につき、八二五万円又は相当額の金員の支払いの意向を示しているので、この意向にそって考えるに、控訴人が八五○万円の金員を支払うことにより、右明渡請求が権利濫用であるとの非難を免れることができるというべきである

東京高等裁判所平成5年12月20日判決
 占有権限のない者に対する建物収去土地明渡請求について、補償金500万円の支払いを要するとされた事例

(判旨抜粋)
1 以上の判示によれば、本件土地の実質的所有者は、○○から死因贈与を受けた被控訴人といってもよいと考えられるが、少なくとも、被控訴人は、△△・□□・○△との関係において、本件土地につき、本件建物所有を目的とし、期間を被控訴人の生存中とする使用借権を有していたということができる。しかし、本件土地の所有権を、○○の唯一の相続人である△△の相続人である□□及び○△から買受けた○企画から取得して、これを被控訴人に対抗することができる控訴人は、右事情、特に本件土地の実質的所有者の点を知っていたとまでは認めることができないし、また被控訴人としては、右使用借権という権利の性質上、控訴人から本件土地の所有権に基づき、本件建物を収去して本件土地を明け渡すことを求められたときには、これを控訴人に対して本件土地の占有権原として主張することができるとは、当然には言えない
 もっとも、控訴人の右収去明渡請求が、権利の濫用に当たるとの特段の事情が認められるときは、この限りではないことになるので、以下、この点について検討する。
2 控訴人代表者は、本人尋問において、控訴人が本件土地を買い受けた際、被控訴人は本件土地上の本件建物にただ住んでいるだけで、本件建物の所有名義が被控訴人名義になっているか事前に確認したことはなく、また本件建物に居住している被控訴人の権利は調査せずに本件土地を購入したと供述する。しかし、控訴人代表者は、前示のとおり、昭和六三年三月一一日設立された不動産取引を業とする関連会社である明成不動産株式会社の代表取締役にも就任していて、不動産取引につき相当詳しい知識を有すると認められ、また、当初、被控訴人を本件土地の所有者と考えたぐらいだから、被控訴人が土地の所有者でないことが分かった後も、本件建物の所有者である可能性が高いと考えていたと推認でき、その上で、控訴人は、被控訴人が、登記した賃借権など控訴人に対抗できる占有権原はなく、法律的に明渡請求は可能であると考えて、本件土地を取得したものと考えられる。
 控訴人代表者は、本人尋問において、被控訴人が、△△及びその相続人に対し、本件土地を使用する何らかの権限を持っているとは思っていたが、本件建物が存続する限り無償で使用する権限を有することは知らなかったもので、控訴人が、公益目的に沿って本件土地の防災対策を行うため、借地権者に対するのと同様の条件を提示すれば、被控訴人は控訴人からの明渡し要求に応じると考えていたと供述する。もっとも、控訴人代表者は、本人尋問において、控訴人が本件土地を買い受ける際、○□から、同人は被控訴人に対し、建物を建て替えるときは崖を直さなければ建物を建てられないので、本件土地に将来にわたり居住していて良いと言っている旨聞いていたとも供述するが、その趣旨は、必ずしも明確でないし、専門業者である控訴人としては、本件土地の防災対策を行うため、一時的に、被控訴人から本件土地の明け渡しを受けることを望んでいるのに過ぎないのであって、本件土地を離れたくないと希望する被控訴人に対し、明渡しを受けた本件土地上に控訴人が建築するマンションの一室を通常の価格で提供することは吝かではない旨供述していることとも対比すると、控訴人は、仲介者である○□から、被控訴人に対し本件土地を将来にわたり使用することを許諾している旨の説明を受けていたとまでは認められない。
 そしてまた、少なくとも、○□の右言動に基づき、被控訴人が新たな行動を起こし、そのために被控訴人の受ける損害が拡大したという事実はないことが認められる(もとより、○□の右言動によって、被控訴人が新たな占有権原を取得したということは言えない。)。
4 さらに本件全証拠によっても、本件土地の取得価額が時価より異常に低廉であること、控訴人に被控訴人に対する不当な害意があること、本件土地の取得に当たり被控訴人に対し強迫、詐欺などの不相当な行為があったこと、本件土地の取得目的が公序良俗に違反するものであることを認めることはできない。
5 以上の判示の限りでは、控訴人の被控訴人に対する本件土地の明渡請求が権利の濫用として許されないと直ちにいうことはできない。
 しかし、(1)他方、控訴人が知らなかったとはいえ、被控訴人は、本件土地の実質的所有者ともいえる者であって、本件土地上の本件建物に適法に既に五〇年近くも居住し、本件土地に深い愛着を有していること、(2)被控訴人は現在高齢で病弱であること、(3)控訴人代表者は、不動産取引についての知識も有している者であるのに、本件土地の所有権取得に当たり、その地上建物の所有者が有する利用権限の有無を調査していないし、被控訴人と十分に明渡しの交渉をしたとも言い難いこと、(4)控訴人が、本訴で補償金として支払うことを申し出ている四二〇〇万円では、熱海市での不動産取引の実情からみて、被控訴人が、本件土地の利用を含む本件建物と同程度の土地建物を、本件土地周辺で取得することは困難であること、その他、本件記録に現れた一切の事情を考慮すると、控訴人の被控訴人に対する本件土地の明渡請求は、控訴人が被控訴人に補償金として五〇〇〇万円を支払うことにより初めて、権利の行使として是認され、濫用にはならないものと認められる
 したがって、控訴人の被控訴人に対する本件土地明渡の主位的請求は理由がなく、予備的請求は、五〇〇〇万円の支払と引き換えに明け渡しを求める限度で理由があるが、その余は理由がない。

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