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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
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立退料に関する裁判例(正当事由肯定・居住用建物)

正当事由を肯定

【東京高等裁判所平成12年3月23日判決】
・月額賃料 
 不明
・築年数 
 約40年
・構造 
 木造
・地域 
 東京都港区赤坂の高級住宅地(防衛庁近く)
・賃貸人側の必要性 
 建物取り壊し、高級マンションの建築を予定
・賃借人側の必要性 
 住居、82歳の高齢、身体障害者三級
・立退料 
 200万円
・算定方法
 引越料その他の移転実費と転居後の賃料と現賃料の差額の一、二年分程度の範囲内の金額
・判旨・その他

 本件共同住宅が建築されてから四〇年を経過していること及び本件共同住宅か存する土地の地理的条件からすると、被控訴人が本件共同住宅及び隣接する建物の改築計画を持つことには十分な合理性がある。そして、控訴人らの本件建物の使用の必要性は、住居とすることに尽きている。そのような場合の立退料としては、引越料その他の移転実費と転居後の賃料と現賃料の差額の一、二年分程度の範囲内の金額が、移転のための資金の一部を補填するものとして認められるべきものである。それ以上に、高額な敷地権価格と僅かな建物価格の合計額を基に、これに一定割合を乗じて算出されるいわゆる借家権価格によって立退料を算出するのは、正当事由があり賃貸借が、終了するのに、あたかも賃借権が存在するかのような前提に立って立退料を算定するもので、思考として一貫性を欠き相当ではない。被控訴人は、昭和六三年一〇月以降賃料を据え置くなどの措置を採り、また、控訴人らが本件建物より高額な賃料の住居に移転するために当面必要な資金として十分と思われる立退料二〇〇万円を提供する意思を示している。これらの賃料の据え置きと立退料の提供は、正当事由の補完たりうるのであって、被控訴人の解約申入れには正当の事由があり、解約の申入れは、その効力を生じたものというべきである。

【東京地方裁判所平成24年8月28日判決】(事務所)
・月額賃料 
 57万6219円(消費税込み)
・築年数 
 約17年
・構造等

 鉄骨鉄筋コンクリート造
 
地上8階・地下2階、オフィスビル
・用途
 事務所(法律事務所)
・地域 
 千代田区二番町(ベルギー大使館付近)
・賃貸人側の必要性 
 隣地と合わせたビル敷地の高度利用・大規模ビルへの建て替え
 隣地の所有権や信託受益権を保有
 建物内の貸室10室のうち8室は退去済み、1室は定借のため退去予定
・賃借人側の必要性 
 事業用、移転に伴う事務の中断・停滞
・立退料 
 1400万円(申出額800万円又は裁判所が相当と認める金額)
・算定方法
 賃料等の約2年分に相当する1400万円(賃料・借家権価格・他の賃借人への立退料等を総合考慮)
・判旨・その他
 (1)借地借家法28条は,建物の賃貸人による更新拒絶の通知は,①建物の賃貸人及び賃借人の建物使用の必要性のほか,②賃貸借に関する従前の経過,③建物の利用状況,④建物の現況,及び,⑤賃貸人が申し出た財産上の給付(いわゆる立退料)を考慮して,正当事由があると認められる場合でなければ,することができないことを定める。
 そこで,本件における正当事由の有無も,これらの事情の有無や内容を検討して判断することになる。
(2)この点,原告の再開発計画は,原告自身が本件建物を直接に使用するというものではない。もっとも,建物の返還を受け,これを取り壊し,敷地上に新たに建物を建築するということも,それのみでは評価は低いが,①賃貸人の建物使用の必要性に準じるものとして考慮することができないわけではない。
 次に,本件建物は,平成6年の建築であり,少なくとも外観上,建て替えを要するほどの損傷は見当たらず,かえって良好に管理されていることが窺われるから(甲11,乙29),④建物の現況として,老朽化による建替えの必要性は認められない(原告の主張もない)。②賃貸借に関する従前の経過として,被告は,毎月定められた賃料を支払っており,被告において,特段,信頼関係を破壊するような背信行為があったとも認められない
 しかしながら,③建物の利用状況について,本件のような8階建てオフィスビルの一室の賃貸借契約においては,当該貸室の利用状況のみならず,ビル全体の利用状況をも考慮しなければならないところ,本件建物は,平成19年3月までに,もともと10室あった貸室のうち,空室を含む8室の明渡しが完了しており,以後,被告に対する更新拒絶までの3年間は,被告及び定期賃貸借契約の賃借人のみが使用した状態であったこと,このような利用状況は原告自身が主導して作出したものであるとはいえ,一方で,退去した賃借人が原告の計画に理解を示した結果であるということもでき,この点は軽視することができない。そして,本件賃貸借契約が,もともと居住用ではなく,事務所としての使用を目的としたものであること,いわゆる普通賃貸借契約ではあるものの,期間2年の契約であり,更新拒絶の時点ではこれが2回更新されたにとどまることを考慮すると,本件建物全体が他の賃借人の理解により,もはやほとんどが空室になっていたことを中心とする本件更新拒絶時点における本件建物の利用状況は,基本的に正当事由を基礎付け得るものであるということができる。  
(3)他方,被告は,移転により被告が被る不利益や本件貸室の必要性について主張する。 
 しかしながら,本件賃貸借契約の目的は,前記のとおり,居住用ではなく,事業用であることに加え,被告のいう600万円以上の設備投資は,その内訳や裏付けが明らかでなく,このうち移転した場合に使用できなくなるものがどの程度あるかは不明である。また,移転に伴う事務の中断や停滞,その他の負担が生じることは,その蓋然性は認められるものの,これらは立退料によって補償され得ないものではない。紛失等の事故発生のリスクは抽象的であり,事故に備えた保険料や精神的な危惧感に対する補償を立退料の評価において考慮することは可能であるが,正当事由を否定するほどの事情とはいえない
 また,原告は,本件貸室の立地や周辺環境が顧客への好印象や弁護士への信頼に結びついているというが,主観的なものであり,弁護士業務の性質,特に被告の行う弁護士業務が,訴訟事件や企業法務への対応,書面作成,大学講師といったものであること(乙21)からすれば,被告に対する信頼は,むしろ被告自身の技量等によるところが大きいということができ,本件貸室の周辺環境によるところが大きいとはいえない
 さらに,被告は,平成21年に二番町に居住用マンションを購入したこととの関係も主張するが,すでに原告担当者から明渡しの打診を受け,他の賃借人の多くは退去した後の事情である上,証拠(甲7,11)によれば,本件建物の周辺である麹町や二番町界隈には,他にも相当数の代替物件(事務所用貸室)が存在することが認められるから,この点が正当事由を否定するほどではない。
(4)以上によれば,原告主張の事情は正当事由を基礎付け得るのに対し,被告のいう事情はこれを総合しても,正当事由を否定するほどのものとはいえない。   
 もっとも,原告による更新拒絶は,被告の賃借後に浮上した再開発計画という原告の一方的な事情によるものであることを考慮すると,立退料の補完によって正当事由を充足するというべきである。そして,証拠(甲12,13)によれば,平成18年から19年にかけて退去した賃借人の立退料は,年間賃料等の0.76倍から1.68倍であること本件貸室の年間賃料等は691万4628円であること,原告が依頼した不動産鑑定士によれば,本件貸室の借家権価格は610万円と評価されていることなどに加え,本件更新拒絶までの被告の賃借期間(6年)や移転に伴い予想される支出や不利益等,本件に現れた一切の事情を総合勘案すると,立退料は賃料等の約2年分に相当する1400万円をもって相当と認める。

★東京地方裁判所平成22年4月13日判決

★東京地方裁判所平成13年12月21日判決

★東京高等裁判所平成12年12月14日判決

★東京地方裁判所平成21年1月28日判決

★東京高等裁判所昭和26年1月29日判決

★東京地方裁判所平成25年12月24日判決

★東京高等裁判所平成5年12月27日判決

★東京地方裁判所立川支部平成25年3月28日判決

最判昭和38年3月1日判決

最判昭和46年6月7日

大阪地判昭和57年7月19日

東京地判昭和58年2月28日

東京地判昭和59年2月28日

大阪地判昭和59年7月20日

東京地判平成2年1月19日

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