A 「説明」(借地借家法第38条第3項)とは、書面を交付した上での口頭の説明をいうとされていますが、書面による説明もありうると解することができないわけではないと考えることもできます。しかし、条文上、事前説明「書面を交付して説明しなければならない」との規定からすると書面を交付したのみでは説明義務を尽くしたとは言えないと考えることができます。裁判例では、書面を送付しただけでは十分な説明したことにならないとするものがあります。したがって、契約締結段階では必ず口頭での事前説明も要すると理解しておいていただき、ただし、契約締結後に口頭での事前説明が欠けていたことが判明した場合には争う余地が全くないわけではないと理解していただければと思います。
なお、説明には、賃借人が理解できるように、分かりやすく、更新がなく期間満了で終了する旨を説明しなければ、説明したことにはならないと考えられています。
東京地方裁判所平成18年1月23日判決
定期建物賃貸借契約において、事前説明が十分になされたと認められず、更新がないこととする定めが無効とされた事例
(事案の概要)
建物賃貸借契約において、賃借人から賃料減額の申し入れがなされ、2年間の定期建物賃貸借契約にするのであれば賃料減額に応じる旨の返答を行い、定期建物賃貸借契約を締結した。事前説明書面の交付はあったが、口頭での事前説明はなかった。賃借人はイギリス出身であり通訳を通してやりとりがされていた。
(判旨抜粋)
しかしながら,上記認定のとおり,A及びBは,上記面談の後,「定期賃貸借事業用建物契約についての説明」と題する書面(甲11,12)を含む本件各書面を被告に送付しただけで,本件賃貸借契約1,2を締結するに当たり,あらかじめ,当該賃貸借が契約の更新がなく,期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付して説明することがなかったのであるから,本件賃貸借契約1,2のうち,借地借家法38条3項により,契約の更新がないこととする旨の定めは無効というべきである。被告Y2及びDは,定期建物賃貸借では契約の更新がないという重要な部分をCの説明により理解するには至らなかったものと認められ(被告Y2及びDがこれを正しく理解していれば,1割程度の賃料が減額されるからといって定期建物賃貸借とすることはなかったと考えられる。),A及びBの定期建物賃貸借の説明は,実際にも十分ではなかったのである。
そうすると,本件賃貸借契約1,2は,平成17年2月28日において期間満了となったところ,その後も被告会社が本件建物1階部分及び本件貸室の使用を継続していることは弁論の全趣旨から明らかであり,原告は,本件において明渡しを求める正当事由があると主張するものではないから,従前と同一の条件で契約が更新されたこととなる。したがって,被告らの抗弁(1)の主張は理由がある。
以上によれば,原告の賃貸借終了及び所有権に基づく本件建物1階部分及び本件貸室の明渡し並びにこれらに係る違約金又は賃料相当損害金の支払を求める主位的請求及び予備的請求は理由がない。

