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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
 不動産業者様が日常的に疑問を持たれる法律問題についてすぐにご回答できるように日々研鑽を重ねています。顧問業務に限らず個別の案件のご依頼についても多数の経験を有しています。
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Q 敷金や保証金の不払いが賃貸借契約の解除事由になりますか。

A 信頼関係不破壊の法理の適用が問題となりますが、裁判例は結論が分かれております。敷金や保証金が賃料の担保として差し入れられるものであり、賃貸人はいつでも未払賃料等に充当することができることに照らせば、解除事由になり得ると考えられます。

東京地方裁判所昭和59年12月26日判決
 保証金の不払いを理由とする更新後の賃貸借契約の解除が認められた事例

【事案の概要】
 保証金の定め「借主は、金六四万円を保証金として差入れるものとし、保証金は年二〇パーセントの割合で償却する。契約期間満了による更新時には、あらためて新賃料の八か月分相当額の保証金を差入れることとし、償却率は前同様年二○パーセントとする。」
 法定更新後、保証金の不払い。解除の意思表示。

(判旨抜粋)
 以上によれば、被告は約定の保証金支払義務を負つているにもかかわらず右保証金の支払をしていないことが認められ、右保証金は低額賃料の補充及び営業利益の対価という性格を有するので、本件保証金の支払は、賃料支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。そして、本件において、原告に対する信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があるとは認められない

東京地方裁判所平成22年4月26日判決
 保証金の不払いを理由とする賃貸借契約の解除が認められた事例

(判旨抜粋)
(1) 被告が平成20年1月29日に原告の預金口座に900万円を振り込んだことは当事者間に争いがない。被告は、これにより本件賃貸借契約の保証金預託義務が履行されたと主張する。
(2) 証拠(甲3、乙21、23、原告代表者本人、被告代表者本人)によれば、①本件賃貸借契約の保証金が預託された外形を作出するため、Aがその個人資金である現金900万円を被告に交付し、被告が平成20年1月28日にいったんこの現金を被告の預金口座に入金した上、同月29日に原告の預金口座に900万円を振り込んだこと、②原告に振り込まれた900万円は、その後Aに返還され、原告の経理処理上、原告に対する入金があった扱いにはされていないこと、③被告は、原告に対し、「経理の都合上保証金を預け入れた形を取りましたが、実際には預け入れをした事実は無く金900万円也は預けていないことをここに一筆差し入れます。」と記載した念書(甲3)を交付していること、④被告がAから900万円を借り入れる旨の金銭消費貸借契約が締結されているわけではなく、被告はAに900万円を返還しなければならないとは認識していないこと、⑤原告と被告は、本件賃貸借が終了して被告が本件建物を明け渡す際に賃料の未払いがあり、又は原状回復のための費用がかかったとしても、被告が原告に振り込んだ900万円から控除することは考えておらず、被告において別途精算することとしていることが認められる。
 本件賃貸借契約の保証金は、被告が延滞賃料、損害賠償その他本件賃貸借契約に基づく原告に対する金銭債務を負い、その弁済が遅延した場合に、その弁済に充当するものである(本件賃貸借契約の契約書(甲2。以下「本件契約書」という。)6条④)。上記事情の下においては、被告が本件賃貸借契約に定める趣旨の保証金900万円を原告に預託したとは到底いうことができない
……
3 以上によれば、被告は、本件賃貸借契約により保証金900万円の預託義務を負ったものの、本件賃貸借契約当初は、原告からその義務の履行を猶予されていたと認めるのが相当である。
 保証金預託義務の履行猶予の期間は定められていなかったが、本件賃貸借契約によれば、保証金900万円は、本来本件賃貸借契約締結時に預託されるべきものであるから(甲2)、猶予期間は、原告が被告に対して保証金の預託の催告をすることにより満了すると解するのが相当である。
 そうすると、原告が平成21年4月17日、被告に対し、保証金900万円を直ちに預託するよう催告し、1週間以内にその預託がなかった場合には、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことは、正当なことであって、当該解除は有効であるというべきである。

東京高等裁判所昭和43年1月30日判決
 敷金九五〇万円を三回に分割して支払うべく、その支払いを一回でも怠つたときは、催告を要せず契約を解除することができる旨の約定がなされた場合に、賃借人が三回目の割賦金七五〇万円の支払いを三日遅滞したとしても、賃貸人が約定解除権を行使することは、信義則に反し許されないとされた事例

(判旨抜粋)
 以上認定の経緯に照らして考えるに本件調停に際し、被控訴人が目録第二の部分の追加賃貸をなすに当り、さきの「借室権設定契約」ないし前記諸事情に目を蔽い、坪当り五〇万円の金員を要求し、結局控訴人らをして三〇〇万円を礼金九五〇万円を敷金として支払うことを約せしめたのは、被控訴人側にその子の事業のため、差し迫つて相当額の金員を必要とする事情があつたとは云え、(この事実は〈証拠〉から窺われる。)、敷金として通常授受されるところをはるかに越えた過大なものであり、不当な要求であつたというを妨げない。しかも、前示の事実関係によれば、被控訴人は、控訴人が調停成立後父をうしない、予定の金策に手違いの生じたこと―いわば事情の変更があつたこと―を知つていたと認められるのであるから、被控訴人としては、約定敷金残額の調達が期日に間に合わなかつたとしても、暫時猶予を与え、よく話し合つて、お互に納得のゆく手段を講じてこそ、信義に沿うと云えるのである。しかるに、被控訴人は、わずか三日の遅滞により、前記調停条項第九項の特約があるのに乗じて、賃貸借解除の挙に出でた。もつとも、前示四月三日当日□弁護士と応対した○は、残額五〇〇万円について、それぞれ金額二五〇万円、満期を同年四月末日及び五月末日とする約束手形で支払うことを許容されたいと申し出たことが証拠上認められるが、○が「△レストラン」の支配人格であつたのは昭和二四年頃までであつて、その後は、控訴人とは直接の関係はなかつたのであり(○の供述による)右四月三日当時の代理人であつたことについては確認がない。しかも○の原審における第二回の供述によれば、右の発言は、あくまでも、その一存でしたにすぎなかつたのであるから、□弁護士としては、控訴人に面会して、意のあるところを問い正すべきであつたのであり、同弁護士が○の言をそのまま信じたとすれば、早計であつたというほかはない。当裁判所は、敷金の性質について、控訴人の当審における(三)(ロ)の見解を採らず、被控訴人の(五)の見解に組するが、しかもなお、敷金は、賃貸借の要素ではないことを忘れてはならない。
 控訴人が七五〇万円の調達に手違いを生ずるにいたつた前示二、(二)、(三)、(四)の事情、被控訴人がこれを知つていたとみとめられること(前示(二))、前示(五)で判示した事情、右金員の要求が過大であり、しかも、それが賃貸借の要素ではない敷金についてであつたこと等前記諸般の状況を考えると、被控訴人の代理人□弁護士によつてなされた賃貸借解除の意思表示は、賃貸人に要求される信義に従い誠実になすべき権利の行使を逸脱したものといわざるをえない。控訴人の権利の濫用の抗弁は、その理由があるというべきである

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