A 旧借地法の適用がある場合、借地権の存続期間は、堅固建物の所有を目的とするときは60年、更新後は30年、非堅固建物の所有を目的とするときは30年、更新後は20年となったり、借地契約の用法順守義務違反等の局面において、堅固建物か非堅固建物かの判断は重要です。
しかしながら、旧借地法での堅固建物と非堅固建物の区別は必ずしも明確ではありません。建物の耐久性、耐震性、耐火性、解体の容易性等を総合考慮して判断されるとされています。
今日では建築技術も向上し、堅固建物か非堅固建物かで借地契約の存続期間を分けることが実情に合わないと考えられ、借地借家法では堅固建物と非堅固建物を区別しないこととしました。「石造、土造、煉瓦造又は之に類する堅固の建物」(借地法第2条第1項)という言葉を前提に、原則として木造は非堅固建物、鉄骨鉄筋コンクリート造は堅固建物として、その間の構造のものをどう評価するかという問題と思われます。
もっとも、以下の裁判例を概観すると概ねいずれかは見通しが立つものと思われます。
東京地方裁判所昭和52年10月31日判決
鉄骨スレート葺建物が堅固建物とされた事例
(判旨抜粋)
二 そこで、本件(三)の建物が借地法二条にいう堅固な建物に当るかどうかについて判断することとする。
1 《証拠省略》を総合すると、次の事実を認めることができる。
(一) 本件(三)の建物は、別紙図面(二)(以下「本件図面(二)」という。)記載のとおり、間口一四・五六メートル、奥行八・一九メートル、床面積一、二階とも二五九平方メートルの鉄骨スレート葺・波型鉄板張りの二階建倉庫兼工場である。
(二) 本件図面(二)の①ないし⑤、⑫ないし⑯の各点の垂直下の地点には、それぞれ直径九センチメートル、長さ一〇八センチメートルの松丸太が打ち込まれ、その上にほぼ別紙図面(一)のような鉄筋コンクリート造りの独立基礎が設置され、その頭部が約一〇センチメートル地上に出ているが、その余の部分は地中に埋められている。右独立基礎相互の間には、布コンクリートが設置されており、一階床は厚さ約七・五センチメートルのコンクリートが打たれている。
(三) 柱は、H形鋼(二〇〇ミリメートル×一〇〇ミリメートル、厚さ七ミリメートル、以下鋼材の単位は、ミリメートルであるが、省略する。)が用いられ、各独立基礎の上に一〇本立てられており、その各底部に座板が熔接されており、これが各独立基礎の頭部に四本のボルトで緊結されている。
本件図面(二)の⑦、⑩、⑱及び㉑の各点の個所にC形鋼(一〇〇×五〇、厚さ一)二本を背中合わせにした間柱が立てられている。
(四) 二階床下の本件図面(二)の①と⑯、②と⑮、③と⑭、④と⑬、⑤と⑫の各二点を結ぶようにH形鋼(二五〇×一〇〇、厚さ一〇)の梁五本が設置され、柱と右の各点は熔接によって接合されている。
右各梁の長さは八・一九メートルであるが、両端の柱から約一メートルのところに継目があり、その継目部分は鋼板が副えられ、ボルト三〇本で緊結されている。
また、右図面①と⑤、㉒と⑥、⑳と⑧、⑲と⑨、⑰と⑪、⑯と⑫の各二点を結ぶ線上に軽ミゾ形鋼(七五×二〇〇、厚さ三)二本を背中合わせにした長さ約三・六四メートルの桁が、柱と柱との間梁と柱及び梁との間に、これらに熔接された三角形の鋼板とボルトとで緊結されている。
二階の床は板である。
(五) 二階の小屋梁は、いわゆる合掌梁で、柱の位置五か所に設けられ、H形鋼(二〇〇×一〇〇、厚さ七)が使用されている。各梁は、C形鋼(一〇〇×五〇、厚さ一)の棟とボルトで緊結されているが、柱とは熔接によって接合されている。
軒桁は、C形鋼(五〇×一〇〇、厚さ一)二本を向い合わせにしたものが用いられている。
(六) 柱及び間柱の外側にC形鋼(一〇〇×五〇、厚さ一)の胴縁が、一、二階をほぼ八ないし九等分する位置に付けられている。右胴縁は、柱とは、これに熔接された鋼板とボルトで緊結されているが、窓(北側一階二個、二階四個、南側一、二階とも各四個、東側一、二階とも各二個設けられている。)の近くは、胴縁と垂直に入れられたC形鋼(一〇〇×五〇、厚さ一)とは熔接によって接合されている。
(七) 北側及び南側の側壁内側に一、二階とも各二か所直径一・一センチメートルの鉄棒の筋違いが、また、一、二階の各天井にも鉄骨の一桝おき位に右と同一の鉄棒の筋違いが設けられている。
(八) 屋根は、切妻屋根でスレートが葺かれているが、右スレートは、胴縁と釣針状の釘で固定されている。
(九) 外壁は、波形鉄板で、これは胴縁に釣針状の釘を引っかけて止め、この釘を外側から捩子で締め付けてある。
内壁は、一階のみベニヤ板が張られているが、二階は何も施されていない。
2 ところで、建物が借地法二条にいう堅固な建物に当るかどうかは、建物の耐久性を中心として、耐震性、耐火性及び解体の難易度をも考慮して決すべきところ、前記認定の本件(三)の建物の構造、使用材料等の諸事実及び鑑定人大島巌の鑑定の結果を総合すると、本件(三)の建物は、耐火性の点においては木造建物と同程度であり、また、解体の難易度の点においては木造建物を廃材にしてする解体の場合と異らないが、耐震性の点においては木造建物の数倍の強度を有し、また、耐久性の点においては、本件(三)の建物に適時に防錆ペイントを塗るという比較的簡単な保存工事をすることによって、七〇年から八〇年位の寿命を保持することが可能であり、木造建物と比してかなり長期の存続期間を有するものと認められる。
以上の点を総合すると、本件(三)の建物は、借地法二条にいう堅固な建物に当ると認められる。
東京地方裁判所平成元年12月27日判決
訴外会社カタログ記載の規格(鉄筋コンクリート布基礎軽量鉄骨造、土台は木製及び鉄骨、支柱及び梁は細い、いわゆるプレハブ)の建物が、鉄筋コンクリートではないものの堅固建物とされた事例
(判旨抜粋)
(一) 本件建物の基礎は、直接地業工事として地表より約一〇五センチメートルまで根切工事を施し、割栗石を約一五センチメートルの厚さに敷き、その上に捨てコンクリートを五センチメートル打った上に、基礎スラブとして鉄筋コンクリート造のベタ基礎を設けている。さらに、支柱にはスタッドボルトが工場溶接されており、基礎柱と支柱の接合性を著しく高めている。
(二) 本件建物の支柱は、それぞれ一般構造用圧延鋼材SS41(JISG3104の規格表示による。)のうち、二〇〇×二〇〇×一二、二〇〇×二〇〇×九、二〇〇×二〇〇×六、(A×B×t,JISG3466のサイズ表示による。)の各角形鋼管及び一七五×一七五×七・五×一一(H×B×t1×t2,JIS G3192のサイズ表示による。以下同じ。)のH形鋼を、大梁は四〇〇×二〇〇×八×一三、三〇〇×一七五×七×一一、三〇〇×一五〇×六・五×九、二五〇×一二五×六×九の各H形鋼を使用し、これら鋼材の継手、仕口などの節点は主に工場溶接により接合され、ボルト締めの部分も接合部材接触面の摩擦抵抗によって力を伝える高力ボルトの一種であるハイテンションボルトが使用されている。
(三) 本件建物の鉄骨部分には、石綿を主成分とした被覆材が吹き付けられ、鉄筋コンクリート造の建物に匹敵する耐火性を備えている。
(四) さらに、基礎スラブ以外のスラブについても、デッキプレート工法が採用されている。
(五) HD型は、鉄筋コンクリート布基礎(連続フーチング、)軽量鉄骨造、土台は木製九〇×九〇及び鉄骨一〇〇×五〇×五で、支柱及び梁も細い、いわゆるプレハブであって、永続的なものではなく、耐用年数は、木造と同じ程度であるが、解体収去ははるかに容易であり、本件建物に比較して堅牢性、解体収去の難易、価格の点において著しく異なる。
2 以上の事実によれば、本件建物は、いわゆる重量鉄骨造であって、かつその工法上、堅牢性、耐火性、解体収去の困難性のいずれの観点からも、HD型を大幅に上回る堅固建物と認められ、これを履すに足りる十分な証拠はない。
なお、被告らは、鉄筋コンクリート造の建物に比べれば、本件建物の堅牢性や解体収去の困難性が劣るとして、本件建物が非堅固建物である旨を主張している。この点につき、《証拠省略》によれば、本件建物は、確かに鉄筋コンクリート造ではなく、解体収去も鉄筋コンクリート造よりは容易であるが、木造及び通常の鉄骨造よりは困難であり、また、耐火性は鉄筋コンクリート造と同程度であり、信頼性は鉄筋コンクリート造より上回り、堅牢性は鉄筋コンクリート造と同程度か、これを若干下回る程度であることが認められる。また、借地法二条は堅固建物の例示として、石造、土造、煉瓦造りの三種を挙げ、これに類する建物を堅固建物としているのであって、鉄筋コンクリート造以外は堅固建物に該当しないという解釈は相当ではない。
したがって、本件建物が鉄筋コンクリート造でないことは、堅牢性等に関する前記判断及び堅固建物であることの判断の妨げとならない。
大阪地方裁判所平成8年8月21日判決
軽量鉄骨プレハブ建物について堅固の建物に該当しないと認めた事例
(判旨抜粋)
(七) 本件建物は、債務者積水ハウスの商品として、主として二階建一戸建住宅あるいは二階建共同住宅用として売り出されているものであり、右商品は価格も木造住宅とほぼ同じで、いわゆる一般向け住宅用といえる。
2 建物が堅固の建物に該当するかどうかは、通常の自然現象と時の経過に対する保存性即ち建物の耐久性に、耐震性、耐火性、堅牢性等の特性を斟酌し、これに解体の容易性を総合考慮して決すべきものである。
ところで、堅固の建物と非堅固の建物との区分は、新しく制定された借地借家法において廃されているように、技術が著しく向上した今日の建築の実情には合致せず、これらを区別することが次第に困難となってきていることは否めない。しかし、堅固の建物の例として鉄筋コンクリート造建物があり、非堅固建物の典型に木造建物が存在することは一般に承認されているところであり、しかも、現在の技術水準においても両者の耐久性等の相違は歴然としている。したがって、本件建物が、堅固・非堅固いずれに属するかについては、鉄筋コンクリート造建物及び木造建物に比較しつつ判断しなければならない。そして、ここにいう木造建物とは、借地法制定当時の木造建物を想定するべきではなく、現在の技術水準に照らし通常の木造建物を基準としなければならない。
(一) 本件建物は、その構造から判断して一般向けの軽量鉄骨プレハブ建築というべきものである。そこで、本件建物の堅固性につきみるに、前記認定の事実によれば、鉄筋コンクリート造建物と比較した場合、耐震性及び耐火性はかなり優れている〔住宅金融公庫が定める準耐火構造に準ずる構造(省令準耐火構造)〕と考えられるものの、鉄筋コンクリート造建物に劣ることは否めず、耐久性、堅牢性においては、これよりも遙に劣ると推認することができる。また、建物の構造体は原則的にボルトによって緊結されているのであってこれを緩めることにより容易に解体撤去が可能である。したがって、両者間には著しい差異があり、本件建物は、鉄筋コンクリート造建物と、その堅固性において大きく異なっていると考えられる。このことは、資産税法上、建物の耐用年数が、鉄筋コンクリート造のものは六〇年、骨格材の肉厚が三〜四ミリメートルの金属造りのものは三〇年、木造のものは二四年とされていることからも窺える。
(二) さらに今日では、木造建物でも、その使用材料と施工方法により、耐久性、耐震性、耐火性を高めたものがあり、これらは広く一般向けに販売されている。本件建物は、このような木造建物と比較すると、ほぼ同等又はやや優れている程度である。
(三) 債権者らは、本件建物の一階部分の土間にコンクリートが使用されていること、地盤改良工事がなされていることをもって、本件建物の堅固性を基礎付けようとする。しかしながら、前者については、土間コンクリートは木造店舗建築等において通常見られるものであり、建物の堅固性に影響を及ぼすものであるとまで認めるに足りない。また、後者についても、軟弱な地盤においては木造建物の建築に際しても地盤改良が求められることは論を待たないところ、前記のとおり本件現場の地盤は軟弱というのであるから、必要な地盤改良工事がなされていることをもって、本件建物の堅固性を基礎付けることはできない。
以上のとおりの事情を総合考慮すれば、本件建物は借地法上の堅固建物と認めることはできないというべきである。
最高裁判所第二小法廷昭和48年10月5日判決
重量鋼造り組立式工場が堅固な建物に該当しないとされた事例
(判旨抜粋)
所論の各点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、首肯するに足り、原判示の右事実によれば、被上告人が改築した一階工場部分は、建築材料として鋼材を使用している点において、通常の木造建築に比較すると、その耐用年数が長いことは明らかであるが、その主要部分の構造はボールト締めの組立式であつて、同工場を支えるH型重量鋼の柱六本もボールト締めをはずすことによつて容易にこれを取りはずすことが可能であるうえ、右柱も中間で切断され杉材の柱で支えられており、また、基礎コンクリート、梁、建物外壁等の構造を全体としてみた場合、解体も比較的容易であるなど、堅固性に欠けるところがあると認められるから、これらの諸点を建築材料および技術水準の現状に照らして勘案すれば、被上告人が改築した本件工場部分およびこれと構造上接続して一体をなす本件建物が借地法にいう堅固な建物に該当しないとする原審の判断は、正当として是認することができ、右認定および判断に所論の違法は認められない。
東京地方裁判所昭和40年1月28日判決
堅固建物に該当するとされた事例
(判旨抜粋)
そこで、本件建物が堅固な建物であるかどうかを考察すると、本件建物のうち主要部分を占める(ホ)の建物の構造は、証人の証言及び検証の結果によれば次のとおりであると認められる。
(ホ)の建物は二階建であって、一階は巾三〇センチ高さ四五センチのコンクリートの基礎のうえに、厚さ六ミリ巾六五ミリのアングル四本で組み立てられた鉄骨ラジス柱一一本がたてられ、そのうち二本は高さ約一・八メートルのところまでは厚いコンクリートでおおわれた鉄筋コンクリートとなっている。あと五本の柱もコンクリートでおおわれており、残りの柱は鉄骨が露出したままである。柱と基礎とはボルトで連結してあるが、コンクリートでおおわれた柱については連結部分もコンクリートでおおわれている。一階天井の梁は厚さ六ミリ、巾六五ミリのアングルを組み合わせたトラスばりであり、梁と柱との連結はボルトでなされている。一階全体は事務所及び倉庫として使用されている。なお、二階は全部木造で、住居として使用されている。
以上認定のとおり、本件建物の主要部分である(ホ)の建物の一階は基礎構造がほとんど鉄骨で作られているので、二階が木造建物であるにもせよ、全体として普通の木造建物に比較して著るしく耐久力、堅牢性を有し、その構造、耐久力からみて借地法第二条にいわゆる堅固の建物に該当すると解するのが相当である。被告は堅固な建物かどうかは耐火性及び取り壊しの難易の点から判断すべきであると主張するけれども、借地法第二条が堅固な建物であるかどうかによって借地権の存続期間の長短を定めている点からみると、堅固かどうかは建物の寿命の長短によってこれを区別しているものと考えられるのであり、いいかえれば、建物の構造の堅牢性、耐久力の強弱がその区別の基準とされていると考えられる。耐久力のある建物は多く耐火性があり、取り壊しが難かしいことが多いであろうが、常にそうとも限らないのである。
宇都宮地方裁判所昭和37年11月7日判決
いわゆる軽量鉄骨造り建物が借地法二条にいう堅固建物に該当しないとされた事例
(判旨抜粋)
そこで、本件軽量鉄骨造の建物が堅固な建物に該当するか否かの点について検討するに、いずれも成立に争いののない甲第六号証の一ないし五、同第八号証乙第三号証の一ないし四、当審証人○、原審および当審証人△の各証言を綜合すると、軽量鉄骨造とは、薄い鉄材を樋形に曲げて中空の筒形にして建物の骨組材にするもので、本件において被控訴人が改築しようとする軽量鉄骨造もこれと同様であり、建物の内部と屋根の下地は木材を使用し、外側はラスモルタル塗りにする予定である。ところで軽量鉄骨造は、特に木材に比して柱、梁等の長尺ものが安価にとれる長所があり、従つて建築費も木造の場合と大差ないため、昭和三二年ごろから木造に代つて工場、住宅等の建築に使用されはじめたもので、その堅牢性耐久性においては木造よりやや優り、また基底部は各柱を各々コンクリート製の土台にボルトで固定するため木造建物に比してその移動は困難であるが、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の重量鉄骨造と異り、中空の筒形の内部が腐蝕し易く、加えて薄い鉄材のため火災にあうと骨組材が挫曲し耐火性には乏しい。そのため固定資産評価の面でも木造建物よりやや高い評価がなされているに過ぎないことが認められ、他に右認定を左右するに足りる疏明はない。従つて本件の如き軽量鉄骨造の建物をもつて鉄筋コンクリート造、石造、土造等の建物と同程度の堅牢性耐久性を有するいわゆる「堅固な建物」と解釈することはできない。
東京高等裁判所昭和59年12月27日判決
軽量鉄骨造の建物が借地法二条の堅固な建物に該当しないとされた事例
東京地方裁判所平成18年6月30日判決
柱に鉄骨を使用してはいるが鉄筋コンクリート造ではない建物が非堅固建物とされた事例

