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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
 不動産業者様が日常的に疑問を持たれる法律問題についてすぐにご回答できるように日々研鑽を重ねています。顧問業務に限らず個別の案件のご依頼についても多数の経験を有しています。
 お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

Q 住宅の賃貸借において更新料の未払が賃貸借契約の解除事由となりますか。

A 解除事由となり得ますが、信頼関係が損なわれていない場合には解除を行うことができず、賃料の1か月分の更新料不払いのみでは解除の効力は認められないとする裁判例が多数です。

東京地方裁判所平成29年9月28日判決
 更新料の支払義務の違反が賃貸借契約の解除事由となると判断された事例

(判旨抜粋)
(1) 原告としては,被告が本件更新料を支払うことを合意したからこそ本件賃貸借契約を2回にわたり更新したのであり,他方,被告としても,本件更新料を支払うことを合意して本件賃貸借契約の更新を得たのであるから,本件更新料の支払は,更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ,本件賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものといえる。したがって,本件更新料の不払は,不払の態様,経緯その他の事情からみて,原被告間の信頼関係を著しく破壊すると認められる場合には,更新後の本件賃貸借契約の解除原因となり得るものというべきである(最高裁昭和58年(オ)第1289号同59年4月20日第二小法廷判決〔民集38巻6号610頁〕参照)。
(2)ア そこで,本件更新料の不払の態様等についてみると,被告は,原告に対し,平成26年11月15日の第1回更新によって第1回更新料(5万3700円)の支払義務を負い,原告からの支払催告(前記第2.2(3)アエオ)も受けていたにもかかわらず,口頭弁論終結時までの2年9か月あまりもの間,同義務を履行していない。また,被告は,原告に対し,平成28年11月15日の第2回更新によって第2回更新料(5万3700円)の支払義務を負い,原告からの支払催告(前記第2.2(3)オ)を受けていたにもかかわらず,口頭弁論終結時までの9か月あまりもの間,同義務を履行していない
イ この点,被告は,前記第3.2(1)アのとおり,本件更新料を支払わない理由を縷々述べて,原告が被告の要求に応じない限り,今後も本件更新料を支払う意思はない旨を明言するが,本件更新料の支払義務は第1回更新及び第2回更新によって直ちに生じており,原告が被告の要求に応じることは同義務の発生条件にも履行条件にもなっていないから,被告において本件更新料を支払わなくてもよいとする法的な根拠はない。
ウ このように,被告は,不払の理由にならないことを縷々述べて,本件更新料の支払を明確に拒絶していることに加え,原被告間には賃料等保証委託や本件建物の火災保険の加入をめぐっても意見の対立があり(前記第2.2(4)イウ),被告が原告本社を来訪した際のやりとり(前記第2.2(4)エ)に照らしても,原被告間において建設的な話合いが行われることは困難な状況であるといえることをも併せ考慮すれば,今後,被告において,原告に対し本件更新料を任意に支払うことは期待できず,本件更新料の不払の問題を原被告間の協議に委ねたとしても自主的な解決は期待できないものといわざるを得ない。
エ 以上のように,本件更新料の不払の期間が相当長期に及んでおり,不払の額も少額ではないこと,被告が合理的な理由なく本件更新料の不払をしており,今後も当該不払が任意に解消される見込みは低く,原被告間の協議でその解消を図ることも期待できないことなどに照らすと,本件更新料の不払は賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤を失わせるに足る程度の著しい背信行為であるということができる。
(3) したがって,本件更新料の不払は本件賃貸借契約の無催告解除の原因となるから,これを理由とする本件賃貸借契約の解除の意思表示が被告に到達したこと(前記第2.2(5))によって,本件賃貸借契約は終了した。

 

東京地方裁判所平成5年8月25日判決
 法定更新の場合にも更新料支払義務を認め、更新料の不払いを理由とする建物賃貸借契約の解除を認めた事例

(判旨抜粋)
 次に、本件のように賃貸借契約が法定更新された場合にも、賃借人に更新料支払義務があるかどうかについて考えるに、〈書証番号略〉によると、本件賃貸借の契約書には、二条二項として、「契約期間満了の場合は甲乙協議の上更新出来るものとし、更新の場合は更新料として新賃料の参か月分を甲に支払う。」と記載されていることが認められ、右文言のみからすれば、合意による更新を念頭に置いたものとみられないこともないが、しかし、①賃貸借が期間満了後も継続されるという点では、法定更新も合意更新も異なるところはなく、右文言上も、更新の事由を合意の場合のみに限定しているとまでは解されないこと、②本件賃貸借の契約書(〈書証番号略〉)では、契約期間が満了しても更新条件についての協議が調わないときは、「引続き暫定として本契約を履行する」ものとする旨定め(一六条三項)、法定更新の場合にも、契約書の定めが適用されるものとしていること、③本件賃貸借が期間を三年と定め、三年ごとの更新を予定して、新賃料を基準とする更新料の支払いを定めていることなどからすると、右更新料は、実質的には更新後の三年間の賃料の一部の前払いとしての性質を有するものと推定されること、④本件のように、当事者双方とも契約の更新を前提としながら、更新後の新賃料の協議が調わない間に法定更新された場合には、賃借人が更新料の支払義務を免れるとすると、賃貸人との公平を害するおそれがあることなどを総合考慮すると、本件賃貸借においては、法定更新の場合にも更新料の支払いを定めた前記条項の適用があり、被告はその支払義務を免れないと解するのが相当である。
3 したがって、被告は、本件賃貸借が平成二年一一月二四日の経過をもって法定更新されたことより、更新後の賃料(少なくとも更新前の賃料と同額)三か月分相当額の支払い義務を負ったものというべきであり、前示のように右更新料が賃料の一部としての実質を有していることからすると、被告が右更新料を支払わないことは賃貸借契約上の重要な債務の不履行であり、解除の原因となると解すべきである(更新料の不払いは解除原因にならない旨の被告の主張は採用することができない。)。
 被告は、被告の更新料の不払いは未だ賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめる不信行為とはいえない旨主張するが、前記認定のとおり、被告は、契約書で定められた更新料の支払義務自体を一貫して否定し続けるとともに、本件賃貸借の存続期間は二〇年であるとの特異な見解に固執して、原告の更新料の請求に応じようとしなかったものであって、被告の右更新料不払いは、賃貸借当事者間の信頼関係を破壊するものと認めるのが相当である(なお、新賃料について合意が成立していないときは、従前の賃料額に基づいて更新料を計算すればよいのであって、右合意の不成立をもって更新料不払いの理由とすることはできない。)。

東京地方裁判所平成24年10月25日判決
 更新料の未払いが信頼関係を破壊しているとは認められず、賃貸借契約の解除を否定した事例

(判旨抜粋)
 上記事実によれば,被告が原告から送られた更新後の新契約書案に同意しなかったことについては,賃借人に不利に変更すると解されかねない契約条項の変更を含む内容であったことからすると相応の理由があると考えられる。そして,原告は,被告に対し,更新料は新契約締結時に授受を行うべきであるとの通知を送っており,原告が送った契約書案における契約条項の変更に被告が同意できない内容があったために更新後の新契約の締結に至らなかったのであり,被告には,更新後の契約を締結すれば更新料を支払う意思も能力もあると認められる
 そうすると本件契約が更新契約を締結することなく法定更新され,更新料を支払っていないことについては,本件契約の解釈としては法定更新であっても更新料を支払うべき義務があると解されるとしても,被告がその支払を現在までしていないことが,原告との信頼関係を直ちに破壊するものとは認められない

東京地方裁判所平成29年1月25日判決
 更新料の未払いが信頼関係を破壊しているとは認められず、賃貸借契約の解除を否定した事例

(判旨抜粋)
 前記前提となる事実によれば,被告会社は,平成24年3月1日の本件賃貸借契約の更新に際し,本件和解及び本件賃貸借契約によって支払義務がある更新料(更新事務手数料を含む。以下同じ。)を支払わず,本件解除1に係る原告の意思表示がされた後である平成25年8月1日に供託するまでその弁済の提供もしなかったことが認められる。
 しかしながら,平成24年3月の更新時には,前記前提となる事実のとおり,あらかじめ原告が大幅な賃料増額の意思表示をした上,賃料の増額に応じなければ賃貸借契約を更新しない旨を告知していたところ,本件和解により賃料が定められてから2年が経過しない時期における大幅な賃料増額の要求に被告会社が反発するのも無理はないと考えられる。また,被告Y1本人によれば,被告会社が更新料の支払を行わなかったのは,賃料額について紛争が生じていたため,更新に係る新たな契約書が作成されたときに支払えばよいと考えていたためであることが認められるところ,賃料額や更新の可否について紛争が生じている状況の下では,そのように考えたことを強く非難することはできない。そして,原告は,平成25年6月26日までの間,更新料の支払を催告した形跡がない上,同日に行われた催告の書面には,増額後の賃料を基準とする更新料と共に,増額後の賃料と既払賃料との差額の支払催告もされているところ,後者は,原告が一方的に請求する根拠を欠くものである。これらの事情を考慮すれば,本件解除1の効力発生日とされている同年7月4日の時点においては,被告会社による更新料の支払義務の遅滞はあるものの,当該債務不履行はいまだ原被告間の信頼関係を破壊する程度には至っていなかったと認めるのが相当である。
 そうすると,本件においては,いまだ当事者間の信頼関係を破壊しない特段の事情の存在を認めることができるから,本件解除1は効力を生じないというべきである。

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