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辻田寛人
弁護士
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Q 高齢者の契約について、どのような場合に意思能力がないとして契約や意思表示が無効であると判断されていますか。

東京地方裁判所平成18年7月6日判決
 高齢者に意思能力がなかったとして、先行の契約の解除及び後行の契約の締結が無効とされた事例

(判旨抜粋)
(1) 被告花子の意思能力について
前記一認定事実に《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。
ア 平成六年八月ころから、被告花子には小刻み歩行が出現し、歩行障害が改善しなかったことから、同年九月二六日、被告花子は、順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下「順天堂医院」という。)を受診し、一一月二二日から一二月一三日まで同医院に精査入院した結果、両下肢に目立つパーキンソニズムがあり、歩行障害は、変形性膝関節症の疼痛に脳血管障害性のパーキンソニズムが加わったことによるものだと判断された。
 被告花子は、その後、順天堂医院への通院を継続し、高血圧悪化等を理由に二度程入院し、平成一〇年一月には、右大腿骨頚部骨折で同医院に入院し、大腿骨頭整復術を受けた。なお、このときの長谷川式簡易知能評価スケール(同スケールは、三〇点満点で、二〇点以下は痴呆の疑いがあるとされる。)の結果は二三点であった。
 平成一一年八月、被告花子は脳MRI検査を受けたところ、脳室周囲に若干のラクナー梗塞が認められたが、脳血管性パーキンソニズムとまでは診断されず、認知機能の障害もみられなかった
イ 被告B山は、本件公正証書一に基づく任意後見契約締結時の被告花子の意思能力について、念のため医師の診断を受けておいた方が良いと考え、その旨原告に指示した。そこで、平成一二年八月七日、原告が順天堂医院の外来で被告花子の意思能力についての診断を求めたところ、同医院の水野医師は、同日付けで、知的能力に障害はなく、遺言書作成能力があると認める旨の診断書を作成した。
 同月、被告花子は、発熱と脱水症状のため順天堂医院に入院し、同年九月に退院したが、この入院時以降、小林智則医師(以下「小林医師」という。)が被告花子の担当医となった。
 同年一〇月、被告花子は、肺炎により順天堂医院に入院したが、その際(同月二五日)撮影された頭部CT像により、脳の萎縮が進行していることが認められ、被告花子の症状については、軽症のアルツハイマー病類縁の病態と判断された。しかし、その症状は軽度であるとともに、塩酸ドネペジルの投薬治療による改善効果も得られた。
ウ 平成一二年一一月一五日、被告花子は、順天堂医院に入院中であったが、原告との間でA野美容室の株式の贈与契約の公正証書を作成することとなったので、担当医である小林医師は、被告花子の意思能力の有無を診断し、同日付けで、「贈与契約作成能力あり」との内容の診断書を作成した。
 しかし、同年一二月、被告B山の助言に従い、さきに被告花子が原告に贈与したA野美容室の株式においては、改めて売買契約を締結することになったため、原告は、被告花子の意思能力について再度担当医である小林医師の診断を求めたところ、小林医師は、同月一一日付けで、「遺言能力あり」との内容の診断書を作成した。
エ 平成一三年三月下旬、被告花子は、めまいや嘔吐を繰り返して体調を崩し、経口摂取が困難となったことから、順天堂医院に入院したが、その際(同月二九日)撮影された被告花子の脳MRI画像によれば、アルツハイマー病の特徴の一つである側頭葉海馬付近の顕著な萎縮が認められた上、前頭葉が明らかに萎縮しており、前頭側頭型痴呆パーキンソニズムの要素の存在が指摘された。小林医師は、前記事情に被告花子の臨床症状を併せ考慮し、被告花子の病態について、パーキンソニズムで初発し、その後認知機能の低下が進行したものであり、歩行障害が顕著な脳血管性パーキンソニズムと診断し、その治療を行った。
 被告花子には、認知機能障害の明らかな進行が認められたことから、原告は、本件公正証書一に基づく任意後見契約等を実行する必要性の有無を判断するため、小林医師に被告花子の意思能力の診断を求めたところ、小林医師は、被告花子に意思能力はないと判断して、同年四月六日付けで、「認知機能障害があり、意思決定に支障を認む。遺言能力及び贈与、委任等の契約能力についても支障があると判断する。」との内容の診断書を作成した。
 被告花子は、入院後は経口摂取が十分可能となったため、小林医師は、高齢の被告花子に負担の大きい検査は行わないこととし、被告花子は、同年四月七日、順天堂医院を退院した。
オ 被告花子は、平成一三年七月三日及び同月二四日、順天堂医院で小林医師の診断を受け、認知機能の検査を行ったが、両日とも、長谷川式簡易知能評価スケールの結果は一四点であり、症状の改善は見られなかった。
 その後、被告花子は、同医院に通院しなくなった。
 前記認定の被告花子の臨床経過に、被告花子が原告及びA野美容室に対して提起した株主権確認請求訴訟(当庁平成一三年(ワ)一五三〇二号事件)における鑑定結果及び同事件における鑑定人の証言(甲五、一八。被告花子は、平成一二年一二月一八日ころまでは、正しい意思決定能力があったが、平成一三年四月以降、正しい意思決定能力に障害があったと判断している。)を併せ考慮すれば、被告花子は、本件公正証書一に基づく任意後見契約を締結した平成一二年七月二五日当時は、意思能力を有していたが、平成一三年四月以降、これを喪失するに至ったものと認めるのが相当である。
(2) 被告花子の契約意思について
 本件公正証書一に基づく任意後見契約締結当時、被告花子に意思能力があったと認められることは前記判示のとおりであるところ、前記一認定事実、《証拠省略》によれば、被告花子は、平成一二年一月ころまでは、養子である被告松夫にA野美容室の経営を委ねようと考えていたが、被告松夫が女性問題で不祥事を引き起こしたり、E田美容室を経営悪化による閉鎖に追い込んだことなどから、被告松夫の経営者(後継者)としての資質に不安を覚えるに至ったこと、同年五月ころから、被告花子は、A野美容室の経営について被告B山に協力を依頼し、同月二六日付けでA野美容室の代表取締役としての行為を委任する旨の委任状を作成するなど、被告B山に対する信頼を深めていったこと、同年七月、被告花子は、被告B山に相談した上、原告と夏夫とを養子に迎える決断をし、本件養子縁組をしたこと、そして、平成一二年七月二五日、A野美容室の経営を両名に委ねる趣旨で、被告花子の保有するA野美容室の株式を原告及び夏夫に相続させること等を内容とする遺言公正証書を作成するとともに、加齢や病気等により自分の意思能力が衰えた場合に備えて、被告B山との間で、任意後見契約及び委任契約を締結して本件公正証書一を作成したことが認められるのであり、前記事実によれば、被告花子と被告B山との間の任意後見契約は、被告花子の意思に基づいて締結されたものであることが認められる。
(3) 以上のとおりであるから、本件公正証書一に基づく任意後見契約締結時に被告花子に意思能力はなかったとする被告花子の主張及び被告花子には前記任意後見契約締結の意思はなかったとする被告松夫の主張は、いずれも理由がない。
四 争点(3)について
 平成一三年四月以降、被告花子には意思能力がなかったと認められることは前記二(1)認定のとおりであるところ、被告花子が本件解除をしたのは、同年六月一三日であるから、本件解除時には、被告花子に意思能力はなかったものと認められる。したがって、本件解除は、効力を生じない。
五 争点(4)について
 平成一三年四月以降、被告花子には意思能力がなかったと認められることは前記二(1)認定のとおりであるところ、本件公正証書二に基づく任意後見契約が締結されたのは、同年六月二七日であるから、契約締結時には、被告花子に意思能力はなかったものと認められる。したがって、前記任意後見契約は、無効である。

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