A 賃料自動増額特約が合意された時点の元の賃料を直近合意賃料として計算するべきとした最高裁判例があります。したがって、自動増額された後の賃料や時点ではないこととなります。もっとも、個別の事案における総合判断と思われますので、事案ごとに検討する必要があると考えられます。
最高裁判所第二小法廷平成20年2月29日判決
賃料減額請求訴訟において、賃料自動増額特約がある場合の直近合意時点を、当該賃料自動増額特約が合意された当初契約時とし、直近合意賃料を当初契約時の賃料(自動増額後の賃料ではない元の賃料)と判断した事例
(事案の概要)
平成4年12月 賃貸借契約締結
賃料自動増額特約
平成4年12月1日~平成7年11月31日 360万円
平成7年12月1日~平成9年11月31日 369万円
平成9年12月1日~平成14年11月31日 441万4500円
平成9年6月27日 1回目の賃料減額請求
平成13年11月26日 2回目の賃料減額請求
(争点)直近合意賃料の額と時点。例えば、1回目の賃料減額について、直近合意賃料を360万円とするか、369万円とするか。経済事情の変動等について、平成4年12月1日から考慮するか、平成7年12月1日からのみ考慮するか。
(判旨抜粋)
借地借家法32条1項の規定は,強行法規であり,賃料自動改定特約によってその適用を排除することはできないものである(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁,最高裁平成14年(受)第689号同15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁参照)。そして,同項の規定に基づく賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの(以下,この賃料を「直近合意賃料」という。)を基にして,同賃料が合意された日以降の同項所定の経済事情の変動等のほか,諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,賃料自動改定特約が存在したとしても,上記判断に当たっては,同特約に拘束されることはなく,上記諸般の事情の一つとして,同特約の存在や,同特約が定められるに至った経緯等が考慮の対象となるにすぎないというべきである。
賃料増額特約が存したとしても賃料減額請求がしうること、及び、賃料増額特約は考慮要素の一つに過ぎないと判示しています。
(判旨抜粋)
したがって,本件各減額請求の当否及び相当純賃料の額は,本件各減額請求の直近合意賃料である本件賃貸借契約締結時の純賃料を基にして,同純賃料が合意された日から本件各減額請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮して判断されなければならず,その際,本件自動増額特約の存在及びこれが定められるに至った経緯等も重要な考慮事情になるとしても,本件自動増額特約によって増額された純賃料を基にして,増額前の経済事情の変動等を考慮の対象から除外し,増額された日から減額請求の日までの間に限定して,その間の経済事情の変動等を考慮して判断することは許されないものといわなければならない。
本件自動増額特約によって増額された純賃料は,本件賃貸契約締結時における将来の経済事情等の予測に基づくものであり,自動増額時の経済事情等の下での相当な純賃料として当事者が現実に合意したものではないから,本件各減額請求の当否及び相当純賃料の額を判断する際の基準となる直近合意賃料と認めることはできない。
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【1回目の賃料減額請求】増額後の369万円ではなく、平成4年12月1日に合意された360万円を基準に平成4年12月1日から減額請求時である平成9年6月27日までの経済事情の変動等を考慮すべき。
【2回目の賃料減額請求】仮に1回目の賃料減額請求が認容されるのであれば、これを直近合時点と同視し、その認容額を基準として、平成9年6月27日から2回目の賃料減額請求時点である平成13年11月26日までの経済事情の変動等を考慮して判断すべき。

