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辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
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Q 賃料増額請求において、鑑定によらずに増額が認められた事例はありますか。

A 鑑定をしていない場合、相当な賃料の立証がなされていないとして増額を認めないものが散見されますが、一部、鑑定を行わずに増額を認めた裁判例があります。鑑定費用は結構かかるので、ワンルームマンション等ではなかなか鑑定を行うのは現実的ではない場合があると思われます。物価高が進む昨今、個別の鑑定によらない簡便な賃料増額ガイドライン等の制定が望まれるところです。

東京地方裁判所平成29年12月11日判決
 鑑定を行わずに賃料増額請求を認めた事例

直近合意時点:平成24年7月11日
(平成26年7月11日に更新合意をしているが直近合意時点とは評価せず。)
増額請求権行使時点:平成28年7月1日
従前賃料:月額298,000円
増額後の賃料:月額318,000円(約6.7%増額)

争点1:直近合意時点

(判旨抜粋)
 以上の認定事実によれば,原告と被告は,平成26年7月11日の本件契約の更新に当たって,賃料の増額が話題になったことがあったものの,増額の必要性・相当性の有無及びその金額について実質的な協議を行った結果として,賃料を増減しないことが相当であるとの合意に達したとの事実は認められず,原告の提案を被告が拒否して増額交渉が決裂したというものにすぎないというべきであるから,本件更新合意をもって現行賃料に合意したものと認めるのは相当でない。よって,本件契約の現行賃料の合意時点は,本件契約の締結時に決定された現行賃料額が最初に適用された平成24年7月11日と認めるのが相当である。

争点2:適正継続賃料額

(判旨抜粋)
ア 証拠(甲4,22の1・2,23)によれば,平成24年から平成28年までの4年間において,本件建物の所在地付近の公示地価が1㎡当たり162万円から205万円に約26.5%上昇し,これに伴って本件建物の固定資産評価額も上昇して,本件建物の固定資産税・都市計画税が年額28万1600円から31万5800円に約12%上昇したこと,同期間において,本件建物が所在する東京都港区の賃貸居住用物件の取引動向における平均賃料単価が1㎡当たり3829円から4793円に約25%上昇したことが認められる。
 これらの事実によれば,本件建物は,建物そのものの価値が経年劣化により若干減少したことを加味しても,敷地の地価を中心とする上記のような各指標の上昇率に対応して,その経済的価値が大幅に増加したものというべきである。そして,建物賃貸借契約は,賃借人に建物を使用収益させることを目的とするものであり,その賃料は,当該建物の経済的価値を反映して決定されるものであるから,本件建物の賃貸借契約の適正賃料も,本件建物の経済的価値の増加に伴って上昇するものというべきである。
 以上によれば,本件契約の現行賃料は,その合意時点から平成28年7月1日までの間における上記のような本件建物の経済的価値の増加という事情の変化により,不相当に低額となったものというべきであり,かかる変化に基づいて現行賃料を増額するのが相当と認められる。
イ もっとも,賃貸借契約が締結された建物は,賃借人の使用収益の利益とは別に,賃貸人も資産価値を保有するものである上,建物の経済的価値以外にも賃料の変動要因には様々なものがあるといえるから,当該建物の経済的価値の増加率がそのまま賃料の上昇率に反映されるのは相当ではないと解される。また,証拠(乙7の1・2,9,18の1・2,19の1・2)によれば,東京都の消費者物価指数(民営家賃)や実質賃金指数は,横ばいかやや低下傾向にあることが認められ,居住用物件である本件建物についての賃料も,かかる消費者物価の変動に対応した需要の動向の影響を受けざるを得ず,賃料の上昇には抑制的に作用するものと認められる。
 さらに,本件建物は,賃借人である被告の居住用物件(自宅)であって,本件契約の賃料は,被告の生活費の重要な部分を占めるものであるといえるから,上記のような本件建物の経済的価値の変化をそのまま反映させて大幅に増額することとなると,被告の生活設計に大きな影響を及ぼすものといえ,増額幅については相応の配慮が要請されるというべきである。
ウ  以上のような諸事情に加え,原告及び被告がそれぞれ挙げる本件建物周辺の賃貸物件の賃料相場を総合考慮すると,平成28年7月1日における本件建物の適正新規賃料は,現行賃料の約10%に当たる3万円を増額した1か月32万8000円と認められ,これに上記配慮の観点から差額分配を行って上昇率を3分の2に抑制すると,同日における本件契約の適正継続賃料は,1か月31万8000円と認めるのが相当である。
(3)ア この点,原告は,東急リバブルによる査定金額や近隣賃貸事例に基づき,原告主張の金額が適正賃料であると主張するが,上記査定(甲7,8)は,本件建物周辺の賃貸事例との比較のみから新規賃料を算定した簡易なものにすぎない上,比較対象とした賃貸事例(甲5,7,8,19の1ないし19の5)も,本件建物の所在地を中心として複数の建物が挙げられているものの,所在地の地域性や最寄り駅からの距離,築年数,賃貸面積・間取り等が本件建物と相違するものが多く,各建物の詳細も明らかとはいえないから,これらを比較事例として本件建物の適正賃料の査定にそのまま反映させるのは相当性を欠くといわざるを得ない。
 また,原告が比較対象としてふさわしいと指摘する物件③は,本件建物と同様に本件マンションの3階に所在し,賃貸面積も本件建物に比較的近いといえるが,証拠(甲20,21の1・2,27,乙12,13)によれば,物件③は,内装及び設備が全面的にリフォームされ,特に台所,洗面及び風呂などの水回りは大幅に改良されている一方で,本件建物は,壁や天井のクロス,床のフローリング,畳及び襖などの内装は交換されているものの,台所,洗面及び風呂などの水回りの設備は旧式の設備を変更していないものであり,このような室内設備の差異が賃料額に影響することは不可避といえるから,物件③と本件建物の賃料坪単価を単純に比較することは相当でないというべきである。
イ 他方,被告は,本件建物の室内設備が上記のように老朽化しており,本件建物は古いがゆえに割安な物件であったことや,本件建物の設備に複数の問題が発生したことから,賃料を増額すべき事情はないと主張するが,本件建物の設備等の老朽化は,現行賃料の決定に際して考慮されているものであって,上記認定説示のように,現行賃料からの増額幅を割合的に検討して適正継続賃料を算定した場合には,既に考慮済みの事情というべきである。また,上記認定事実及び証拠(甲17,18の1ないし18の4,26,乙17)並びに弁論の全趣旨によれば,本件建物で2回発生した漏水事故については修繕及び補償が済んでおり,水道水の濁りや異物の混入も,その原因と考えられる本件マンションの給排水管全体の老朽化につき,大規模修繕工事が近く予定されており改善が見込まれること,被告は,平成28年6月,本件建物の外壁に開けられたエアコン配管用の穴にスズメが出入りしていたことから,原告ないし東急リバブルに対応を求め,東急リバブルは,同エアコン配管にカバーを付けることで外壁の穴を塞ぐとともに室内機のクリーニングを行って対応を完了したことがそれぞれ認められるから,いずれの事情も本件契約の賃料の増額を抑制すべき理由になるものではないというべきである。さらに,被告は,近隣賃貸事例の募集賃料が年々減額されていることを指摘するが,これは成約の可能性を上げようとする値動きとみるのが相当であり,直ちに賃料の減少傾向を示すものではないし,被告が比較対象とする賃貸事例には,建替予定のために賃料を格安に設定したものが含まれており(甲10,13,乙10,11の3・4),いずれも上記認定を覆すに足りるものではない。

東京地方裁判所平成25年5月22日判決
 裁判所が鑑定を促したが原告が応じず、賃料増額が認められなかった事例

(判旨抜粋)
 賃料増額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,借地借家法32条1項所定の諸事情(租税等の負担の増減,土地建物価格の変動その他の経済事情の変動,近傍同種の建物の賃料相場)のほか,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであるところ,原告は,裁判所の再三の立証の促しに対し,鑑定の必要はないと主張し,本件建物は子供服販売の店舗として賃貸したものであり,カラオケ喫茶として賃貸するのであれば,適正賃料である月額24万5000円を下る賃料で賃貸することはなかった旨の別件訴訟での主張を繰り返し,一般的な江戸川区の店舗賃料の相場(甲6,7)や本件建物の周辺の店舗の賃料(甲18,28ないし36)を相当賃料額を立証する証拠として提出するのみであり,従前賃料が合意された平成17年6月から本件増額の意思表示時点である平成23年2月までの約5年9か月の間に,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増加,土地若しくは建物の価格の上昇といった経済的事情の変動や本件建物周辺の賃料相場が特に上昇したという事情が存するかどうかは明らかでない。また,相当賃料額についても,最終合意時点(平成17年6月21日)と増額意思表示時点(平成23年7月1日)における本件建物の基礎価格をそれぞれ求め,本件建物の新規賃料を算出し,これらを基に,継続賃料の各評価手法(利回り法,差額配分法,スライド法)を適用して算出する必要があるのであって,本件建物についてそのような算出の資料となり得る証拠は何ら提出されておらず,平成23年7月1日以降1か月27万円が本件建物相当賃料であるという主張を認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ない
 したがって,賃料増額確認を求める原告の請求も理由がないことに帰する。

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