MENU
辻田寛人
弁護士
 幅広く弁護士業務を行っており、中でも不動産業者様の顧問業務を多く取り扱っております。
 不動産業者様が日常的に疑問を持たれる法律問題についてすぐにご回答できるように日々研鑽を重ねています。顧問業務に限らず個別の案件のご依頼についても多数の経験を有しています。
 お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

Q 使用貸借において、終了原因である「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」た否かはどのように判断されるのですか。

民法第597条及び民法第598条は使用貸借契約の終了について次のとおり定めます。

民法第597条(期間満了等による使用貸借の終了)
1 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

第第598条(使用貸借の解除)
1 貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

 上記「借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」か否かは、単に土地使用貸借契約における「建物所有の目的」や建物使用貸借契約における「居住の目的」といったような抽象的なものではなく、契約成立当時における当事者の意思から推測されるより個別具体的なものをいうと解されています。

東京高等裁判所令和元年7月3日判決
 使用貸借の終了原因である「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」か否かについて判断された事例

(判旨抜粋)
 民法597条2項ただし書にいう「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」か否かは,使用貸借契約に定めた目的に照らして判断すべきところ,上記目的は,単に土地使用貸借契約における「建物所有の目的」や建物使用貸借契約における「居住の目的」といったような抽象的なものではなく契約成立当時における当事者の意思から推測されるより個別具体的なものをいうと解されるから,単に昭和45年最判が土地使用貸借契約に係る事案であるというだけで,これを参照すべき理由がないとはいえない。そして,控訴人が引用する最高裁昭和59年11月22日第一小法廷判決のようにその目的が貸主親族の長期間の居住ということであれば,実際に経過した期間が長期間である以上,特段の事情のない限り使用及び収益をするのに足りる期間を経過したといい得るところ,本件においては,企業内労働組合である被控訴人がその組合事務所として用いる目的で使用者である控訴人の本社建物内に所在する本件事務所を無償で使用しているのであるから,「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」か否かは,単にその経過した年数のみならず,上記目的や本件事務所の使用の方法,程度,控訴人が本件事務所の使用を必要とする緊要度など双方の諸事情をも比較衡量して判断すべきものであることは,引用する原判決第3の2が説示するとおりである。そして,控訴人が本件事務所を使用すべき必要性が肯定し難い一方で,被控訴人が引き続きこれを使用する必要性は極めて高く,控訴人が提供を申し出ている代替施設はいずれも組合事務所として使用するのに適切であるとはいえないなどの原判示の事情に照らせば,本件事務所の使用貸借契約について,その目的に従って使用収益をするに足りる十分な期間が経過したとはいえないことも,引用する原判決第3の2が説示するとおりである。

最高裁判所第一小法廷昭和59年11月22日判決
 居住目的の使用貸借について、「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」と判断された事例

(判旨抜粋)
 本件使用貸借の目的は被上告人及びその家族の長期間の居住ということにあるが、被上告人が本件使用貸借に基づき本件建物の占有使用を始めてから本件解約当時まで約三二年四か月の長年月を経過していることが明らかであるから、他に特段の事情のない限り、本件解約当時においては、前示の本件使用貸借の目的に従い使用収益をなすに足るべき期間は、既に経過していたものと解するのが相当であるところ、右特段の事情があることについては被上告人が主張・立証していないから、本件使用貸借は本件解約によつて終了したものというべきである。

東京地方裁判所平成30年2月27日判決
 居住目的の使用貸借において「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」とは判断されなかった事例

(判旨抜粋)
(2) 使用貸借の期限について
 被告らは,Aは,被告らに対し,本件建物に一生住んで良いと述べていたから,本件土地及び本件建物2階部分の使用貸借契約には,「被告ら両名の死亡に至るまで」という不確定期限が定められており,本件土地を相続した原告にも,同期限が承継されている旨主張し,被告Y1及び被告Y2もこれに沿う供述(乙9,10,被告Y2本人)をする。しかし,Aの上記発言を客観的に裏付けるに足りる証拠はない上,被告Y2は,Aは,本件建物を建築する際,今後,被告ら2人が生活できるようにとも述べていた旨供述していることに照らすと,Aは,被告らが,長期間にわたって本件建物に居住することを承認していたことはうかがわれるものの,これを超えて,「被告ら両名が死亡に至るまで」との明確な期限を定めていたものと断定することは困難である。よって,被告らの上記主張は採用できない。
 そして,そのほか,本件土地及び本件建物2階部分について,Aと被告ら,もしくは,原告と被告らとの間で,使用貸借の期限を明確に定めたものと認めるに足りる証拠はない。
 以上によれば,本件土地及び本件建物2階部分についての使用貸借は期限の定めのないものと認められる。
(3) 使用貸借の目的及びその終了について
 原告は,本件土地及び本件建物2階部分について何らかの目的(例えば居住目的)が定められていたとしても,被告らが本件建物に居住を始めてから,本件建物の建築時点である昭和54年2月から現在までは38年間が,仮に,Aが他界した平成7年2月からとみても,現在まで22年以上が経過しているのであり,目的に従った使用収益に足りる相当期間は経過している旨主張する。
 そこで検討するに,前記認定事実によれば,本件土地及び本件建物2階部分について成立した使用貸借の目的は,被告らの長期間の居住であったものと認められるところ,被告らが,本件建物に居住し始めてからは,約38年間の期間が経過し,本件建物2階部分を使用し始めてからも約22年間が経過していることが認められる。
 もっとも,前記認定事実及び証拠(甲9,乙9,10,原告本人,被告Y1本人,被告Y2本人)並びに弁論の全趣旨によれば,本件土地は,そもそも,主に原告,被告Y1ら○○家の家族が居住することを目的に使用されていたことが認められること,本件土地の所有者であったAは,本件建物を建築して,被告らを同建物1階部分に居住させ,被告らが本件建物に居住するために本件土地を長期間にわたって無償使用することを当然のものとしてこれを認めており,相続によって本件土地を承継したにすぎない原告においても,被告らの上記使用状況を認識しながらも,これを容認する態度を取っていたことが認められる一方,使用貸借契約成立後,本件明渡しに関連するトラブルを除いては,同契約当事者間の人的関係に変化があったとも認められない。以上の事情に加え,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被告らには,本件建物のほかに居住する場所があると認められないこと,原告は,原告建物を建て替えるために,被告らに対して本件建物及び本件土地の明渡しを求めていることが認められるものの,現時点において,原告建物自体が立て替えを必要としたり,原告が本件建物2階部分の使用を必要とするべき状況に陥っているとまではいい難いこと(原告は,原告建物を建て替えて住居兼賃貸物件を建築することを予定しているが,当該建物を建築すること自体の必要性については明らかではない。)などの事情を総合考慮すると,被告らが本件土地及び本件建物2階部分を使用し始めてから長期間が経過していることを踏まえても,本件土地及び本件建物2階部分について,使用収益するのに足りるべき期間が経過したものとは認められない

東京地方裁判所平成25年12月25日判決
 自身の子への居住目的の使用貸借について、「使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」と判断された事例

(判旨抜粋)
(2) 本件使用貸借契約の際,返還の時期又は使用及び収益の目的が定められたことを認めるに足りる的確な証拠はない。しかし,上記認定事実によれば,被告の親である原告が,被告及びその家族を長期にわたり居住させる目的で,本件建物を無償で使用収益させていたものと推認される。このような場合であっても,被告が最初に区分前建物の使用を開始した時点から原告による解約の通知がされるまでの間,約20年余が経過していることにかんがみると,特段の事情がない限り,本件解約通知がされた時点で,本件使用貸借契約については,民法第597条第2項ただし書所定の「使用及び収益をするのに足りる期間」は経過していたものと解するのが相当である(最高裁判所昭和58年(オ)第170号昭和59年11月22日第一小法廷判決裁判集143号177頁参照)。
 確かに,被告は,本件建物において,配偶者及び3人の子とともに居住しており,子らは,いずれも近隣の小学校や幼稚園に通学していることは認められる。しかし,被告は,原告から平成14年1月に母屋建物の贈与を受けており,その母屋建物から賃料収入を得ている。また,本件解約通知がされたころには,被告において原告からのメールや電話を受信拒絶するなど,原告と被告との間では親子としての交流が失われていたものと認められる。これらの事実を踏まえると,本件建物を明け渡すことが,被告及びその家族にとって,慣れ親しんだ生活環境や通学環境の変更をもたらすことになる点その他本件に顕れた一切の事情を考慮しても,上記特段の事情があるとは認められず,他にこれを認めるに足りる事実関係の主張立証はない。
 したがって,本件使用貸借契約は,本件解約通知により終了したものというべきである。
(3) 進んで,賃料相当損害金について検討するに,賃貸中の母屋建物の床面積が合計98.98m2であり,その賃料が月額34万6500円であること,本件建物の床面積が合計169.04m2であることには争いがない。そして,母屋建物の床面積1m2当たりの月額賃料3500円(=34万6500円÷98.98,円未満切捨て)を本件建物の床面積に乗ずると,その月額賃料額は59万1640円(=3500円×169.04m2)となる。しかしながら,母屋建物は川越市内の大通りに面しており,店舗として利用されているのに対し,本件建物は,大通りに面していない敷地内の奥まった場所に建築されたものであることが認められる(甲5,甲6)。そうすると,母屋建物と本件建物とは,その利便性の程度や用途が異なるから,現在の母屋建物の床面積1m2当たりの月額賃料をそのまま本件建物の床面積1m2当たりの月額賃料相当額として認めることはできないというべきである。他方,本件建物が川越市内の中心部にあることを踏まえると,その床面積1m2当たりの月額賃料は,少なくとも母屋建物の半額である1750円程度はあるものと考えられる。したがって,本件建物の賃料相当損害金としては,29万5820円(=1750円×169.04m2)をもって相当と認める。
3 以上によれば,原告の請求は,被告に対し,本件使用貸借契約の終了に基づき,本件建物の明渡し及び解約通知から1週間経過した後の日である平成24年11月24日から本件建物の明渡し済みまで1か月当たり29万5820円の支払を求める限度で理由がある。

まずはお気軽にお問い合わせください。
 不動産業分野に注力している当職へ是非お問い合わせください。
 当職(辻田)は、初めての方の初回法律相談30分を無料(延長30分につき5500円)とし、具体的なご依頼に至った場合には延長についても無料としております。また、不動産業者様及び顧問をご検討の方は初回相談(1時間程度)を無料としております。メール(tsujita@ohhara-law.jp)又は、お電話(03-3239-1311)へご連絡いただければ幸いです(弁護士の辻田をお呼び立てください。)。お気軽にお問い合わせください。

あわせて読みたい
顧問弁護士サービスのご案内  当職は、不動産業者・地主・事業会社向けに、迅速で実務に強い顧問弁護士サービスをご提供します。 日常相談、契約書チェック、通知書作成、紛争予防から、立退き・...