A 錯誤取消し(旧民法では錯誤無効)が認められるのは相当なハードルがありますが、マスターリース契約においてオーナーの錯誤無効が認められた裁判例は存在します。
東京地方裁判所令和3年10月4日判決
マスターリース契約において錯誤無効(改正民法下では錯誤取消し)が認められた事例
(判旨抜粋)
1 前記前提事実に加え,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件建物を購入するに当たり,被告に対し,本件建物について,継続的に賃料収入を得つつ,物件価格が上昇したタイミングをみて売却することを伝え,被告はこれを認識した上で本件建物を売却したこと,本件リース契約を締結するに当たり,被告は,原告に対し,管理業務を被告に任せることによって,原告自身が対応する必要がなくなり,備品が故障した際にも割安で交換できる上,本件解約条項により,いつでも解約することができる旨の説明をし,原告は,本件リース契約をいつでも解約できる賃貸管理に係る契約と認識して本件リース契約を締結したことが認められ,これに反する証拠はない。
2(1) 前記1のとおりの本件リース契約締結に係る経緯からすると,本件リース契約が正当事由により解約が制約される賃貸借契約であったとすると,原告は,これを本件解約条項により,いつでも解約できる賃貸管理に係る契約と誤信して本件リース契約を締結したこととなり,原告には本件リース契約の要素に錯誤があったというべきである。したがって,本件リース契約は,錯誤により無効であると認められる。
……
3(1) これに対し,被告は,原告の主張する被告の説明に疑義があるなどと主張する。
しかし,本件リース契約の契約書には,本件解約条項が明確に記載されており,被告が原告に対し,本件リース契約を締結するにあたり,契約書と異なる説明をしたとは考え難いから,原告の陳述書(甲10)は十分信用できるものである。
したがって,被告の主張は採用することができない。
東京地方裁判所令和2年11月24日判決
マスターリース契約において錯誤無効(改正民法下では錯誤取消し)が認められた事例(なお、被告は答弁書を提出したほかは出頭していない。)
(判旨抜粋)
この点を措き,被告が原告の錯誤無効及び本件失効条項に基づく契約の不存在の主張に対しても争う趣旨であると解したとしても,証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成26年12月6日,被告から本件建物を買い受けるに際し,被告に対し,既に株式会社○が賃借している本件建物から継続的に賃料収入を得つつ,物件価値が上がったタイミングをみて売却することを予定している旨を伝えていたこと,被告は,本件契約を締結することにより,所有者である原告が煩わしい賃貸管理の業務を負う必要がなくなり,本件解約条項により,いつでも本件契約を解約できる旨の説明をしたため,原告は本件契約を締結した事実が認められることからすると,原告は,本件契約がいつでも解約が可能な賃貸管理に関する契約であると認識して本件契約を締結したものと認められる。そうすると,仮に本件契約が正当事由により解約が制約される賃貸借契約であったとすると,原告はこれを賃貸管理契約と誤信して本件契約を締結したことになるから,原告には本件契約の締結につき要素の錯誤があり,したがって,本件契約は錯誤により無効であると認められる。

